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遺留分とは

遺言書

遺言書は、満15歳になれば、だれでも書くことができ、内容についても、法律が定める要件を満たしていれば、比較的自由に遺言を書くことができます。

民法第960条 遺言の方式

遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

民法第961条 遺言能力

十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

遺言書イメージ

このように被相続人(お亡くなりになった方)は自由に遺言が作成できるので、例えば、父が死亡、相続人が長男と次男という場合に、父が長男に全ての遺産を相続させるという内容の遺言書も書くこともできます。

遺留分とは

兄弟話し合いイメージ

遺留分とは、「一定の相続人が相続できる最低限の取り分」のことです。
被相続人は、生前に贈与したり、遺言を残すことによって、原則として自由にその財産を承継させることはできますが、たとえ遺言書で「長男に全ての遺産を相続する」と書いてあったとしても、遺留分の限度により、遺言に制限が加わってくるということです。
そのため、先ほど例にあげた、相続人である長男と次男の話で考えてみると、父の遺言書に「全ての遺産を長男に相続させる」と書いてあった場合でも、次男には遺留分があるため、全ての遺産を長男が相続できるとは限らないということになります。
しかし、注意しなければいけないのが、遺留分が認められている相続人は、放っておいても当然にもらえるということではありませんので、先の例の次男は遺留分を請求しなければ、遺言のとおり、長男が全て相続することになってしまいます。そのため、次男は遺留分を主張し、最低限の遺産をもらうことになります。

遺留分侵害額請求権(旧称:遺留分減殺請求権)

遺留分侵害額請求権とは、遺留分を侵害された相続人(先の例では次男)が、贈与または遺贈を受けた者(先の例では長男)に対して、その財産の取り戻しを請求することをいいます。

なお、法改正(2019年7月1日施行)により、遺留分減殺請求は、「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。

遺留分侵害額請求権ができる人とは?

遺留分侵害額請求権ができる人は決められており、被相続人の配偶者、子、直系尊属(父母、祖父母など)の3者だけです。ただし、これら3者の人であっても法定相続人にならない場合(相続権を剥奪されている場合や上位の法定相続人がいる場合)には、遺留分権はありません。また、兄弟姉妹にも遺留分は、ありません。


法定相続分と遺留分の割合

法定相続分とは「民法で定められた法定相続人が相続できる遺産の割合」です。法定相続人とは「民法で定められた相続の権利がある人」のことを意味します。
法定相続人は被相続人との関係で優先順位が決まります。
法定相続分は、遺言がない場合の相続のとき、協議や調停・裁判によって分割内容を決定する際に基準となります。
遺留分とは、前述でご説明した通り「相続人が相続できる最低限の取り分」のことです。

法定相続分と遺留分の割合を比較してみましょう。下記表をご覧ください。

法定相続分遺留分
配偶者のみ100%相続財産の1/2
配偶者+子配偶者1/2相続財産の1/2×1/2
1/2÷人数相続財産の1/2×1/2÷人数
子のみ100%÷人数相続財産の1/2÷人数
配偶者+直系尊属配偶者2/3相続財産の1/2×2/3
直系尊属1/3÷人数相続財産の1/2×1/3÷人数
直系尊属のみ100%÷人数相続財産の1/3÷人数
配偶者+兄弟姉妹配偶者3/4相続財産の1/2
兄弟姉妹1/4÷人数なし
兄弟姉妹のみ100%÷人数なし

各相続人の遺留分割合は、権利者全員の遺留分割合に法定相続分を掛け合わせて算出するパターンがいくつかあることが分かります。

民法第1042条 遺留分の帰属及びその割合

1 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一  直系尊属のみが相続人である場合:三分の一
二  前号に掲げる場合以外の場合:二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

遺留分侵害額請求権の具体例

電卓イメージ

では、具体例を用いて遺留分の計算をしてみたいと思います。
被相続人の相続財産が5,000万円だった場合で、各ケースごとに算出してみましょう。

ケース① 相続人が配偶者のみの場合


【5,000万円×(1/2)= 2,500万円】

ケース② 相続人が配偶者+子ども2人の場合


配偶者:【5,000万円×(1/2)×(1/2)=1,250万円】
子1  :【5,000万円×(1/2)×(1/2)÷2人=625万円】
子2  :【5,000万円×(1/2)×(1/2)÷2人=625万円】

ケース③ 配偶者死亡のため、子ども2人のみの場合


子1  :【5,000万円×(1/2)÷2人=1,250万円】
子2  :【5,000万円×(1/2)÷2人=1,250万円】

冒頭から例にあげている長男と次男の話で、実際に次男が遺留分を請求した場合には、このケースが該当いたします。
ただし、具体的に次男がいくらもらえるかは、交渉をして決めます。もし、交渉が決裂したときは、家庭裁判所で遺留分侵害額請求調停や地方裁判所で遺留分侵害額請求訴訟をすることができます。

ケース④ 配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合


配偶者:【5,000万円×(1/2)=1,250万円】
兄弟姉妹:なし

遺留分侵害額請求の時効と期限

遺留分侵害額請求ができる期間は法律によって決められています。
遺留分権利者が、①相続の開始と、②遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から、1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければ、それ以後の遺留分侵害額請求はできません。
すなわち、1年間が遺留分侵害額請求ができる期限とされています。
①相続の開始というのは、被相続人の死亡のことを指します。
②贈与・遺贈があったことだけではなく、その贈与・遺贈が遺留分を侵害することを知ったことまで要求されると解されます。
注意すべき点は、遺留分権利者が相続開始を知ってから1年間に当てはまるとしても、相続開始の時から10年が経っている場合には、時効によって消滅しますので、早めご対応をおすすめします。

民法第1048条 遺留分侵害額請求権の期間の制限

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

遺留分に関する弁護士へのご相談

遺言書と遺留分に関するトラブルがあれば、弁護士法人シーライトにご相談ください。

改正相続法と旧相続法

旧相続法での遺留分に関する請求には、いくつかの問題点がありました。
例えば、「親の代から自宅で商売をしています。兄が商売を引き継ぎました。遺言によると、自宅兼商店を全て兄に相続させると書いてあります。遺留分侵害額請求をしたものの、売却をして一時的にでも別の場所で商売をするとなると、『商売がふるわなくなってしまう』ので、売却もできず、結局、共有状態になったままです」といったケースの場合です。
そこで、改正後の新相続法では、最低限の取り分を金銭で請求できるように法改正されました。旧相続法で遺留減殺請求をしたけれども共有状態が続いていて、悩んでいらっしゃる方は、一度弁護士にご相談下さい。

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