相続放棄撤回と取消、取下げの違い
一度相続放棄をしてしまうと、あとあと、「やはり相続放棄をやめたい」と思った場合でも、一度行ってしまった相続放棄をやめることはほとんど不可能となります。
しかし、稀に認められるケースもあります。それが「取り下げ」、「取り消し」、「錯誤無効(錯誤取り消し)」になります。
今回は、それぞれ「取り下げ」、「取り消し」、「錯誤無効(錯誤取り消し)」について説明していきます。
相続放棄の取り消し
相続放棄を行うと撤回することはできません。
しかし、以下の事由にどれか一つでも当てはまれば、相続放棄の取り消しができます。
- ・詐欺や強迫によって相続放棄をさせられた場合
- ・未成年者が法定代理人の同意なしに相続放棄をした場合
- ・成年被後見人本人が相続放棄をした場合
- ・被保佐人が保佐人の同意なしに相続放棄した場合
- ・相続放棄を補助人の同意が必要な行為と定めている場合に、被補助人が補助人の同意を得ずに相続放棄した場合
- ・後見監督人がいる場合、その同意を得ずに後見人が相続放棄するか、未成年被後見人が後見人にしか同意を得ずに相続放棄をした場合
相続放棄の取り消しの手続きは、裁判所に相続放棄取消申述書および付属書類(戸籍類など)を提出する必要があります。
また、相続放棄の取り消しの際には、「なぜ相続放棄の取り消しの申述をすることになったのか」理由がわかる証拠書類を提出する可能性もあるため、可能な範囲で準備しておくことをお勧めします。
なお、取り消しが可能な期間は「詐欺であることに気がついた時など(追認できる時)から6カ月以内」かつ「相続放棄から10年以内」となります。
もうひとつの可能性ー錯誤無効(錯誤取り消し)ー
錯誤とは、勘違い(錯誤)で行ってしまった法律行為を無効(取り消し)にすることです。現在、民法が改正され、錯誤無効は錯誤取り消しとなっています
ただし、相続放棄の錯誤無効(錯誤取り消し)については、認められることが少ないことに注意が必要です。
相続放棄は、以下のいずれかに該当する場合に、錯誤無効(錯誤取り消し)が認められる可能性があります。
- ・相続放棄の申述に対応する意思がない場合
- ・相続放棄をした事情について錯誤があり、その事情を本人が表明している場合
錯誤無効(錯誤取り消し)を主張するには、この他の要件として、重過失がない(当然払うべき注意は十分に払った上で勘違いしてしまった)ことが必要です。
しかし、先ほども述べたように相続放棄の錯誤無効については判例はあるものの、基本的にはあまり認められない傾向にあります。相続放棄を行う場合には慎重に行うようにしましょう。
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