寄与分について
寄与分とは
寄与分とは、共同相続人の中に被相続人の財産の維持または、増加に特別な貢献をした相続人がいる場合、相続人同士の公平のために、これを相続分算定の際に考慮することです。
簡単にいえば、相続人が複数人いる共同相続人のうち、被相続人を看病したり、介護したり、被相続人を助けるために労働をしたりして被相続人の財産に貢献した者(他の人に払うべきところ支出をせず、財産を減らさなかったことも含みます)に対して支払われる一定の補償のことです。
たとえば、父Aが遺言を遺さずに亡くなり、遺産が現金1,000万円あったとします。相続人は、子供である長男Bと次男Cの2人のみの場合、法定相続分に従って分けると長男Bと次男Cで500万円ずつ分けることになります。
しかし、もし長男Bが、生前に父Aの事業を無償で長期間にわたり助けていた場合、長男Bの助けがなければ現金で400万円分は遺産が減っていたという事情(遺産総額の4割が寄与分)が加わると、500万円ずつ分けることは公平とはいえません。
そこでこのような場合、1,000万円から400万円を控除し、600万円を相続財産とみなし、みなし相続財産とします。このみなし相続財産に相続人の人数、今回の場合は、2人で割り、長男Bと次男Cの相続分300万円を算出します。
つまり長男Bについては、寄与分があるので最終的な相続分は400万円を加えた、トータル700万円を父Aの遺産から受け取ることになります。
長男Bと次男Cの遺産相続金額
長男B:みなし相続財産(1,000万円ー400万円)÷子供の人数(2人)+長男Bの寄与分(400万円)=700万円次男C:みなし相続財産(1,000万円ー400万円)÷子供の人数(2人)=300万円
1 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。
寄与分はどのように決まるのか
寄与分は、被相続人と相続人の身分関係に照らし、通常期待されるような程度以上の貢献であれば相続の際に考慮の対象となります。
夫婦間の協力扶助義務や親族間の扶養義務は、民法が定めており、親族内で通常行われている程度の行為は特別の寄与にはあたりません。
特別の寄与にあたる行為は、家業従事型、金銭等出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型の5類型に整理されております。これらの複合型も見られます。
寄与分の有無や金額・割合は、その行為がどれくらい必要な行為だったのか、無償で行われた行為といえるのか、継続して行われたのか、他の相続人と比べて特別の貢献といえるのかなどの観点からまずは話し合いで決めることとなります。
話し合いで解決しない場合、調停・審判となるのは遺産分割と同じです。
このような寄与分の評価を巡って、相続人間で争いが生じるが多々あります。特に近年では、相続人の権利意識も高まっており、些細な問題で思わぬ相続紛争に発展することもしばしば見受けられます。
弁護士法人シーライトでは、寄与分に関するご相談も承っておりますので、お気軽にお申し付け下さい。