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生命保険金は、相続財産に含まれるのか?

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被相続人が生前に生命保険を契約し、被保険者になっていた場合、生命保険金は、相続財産に含まれるのかどうか疑問に思われることもあるのではないでしょうか。特に、生命保険金の受取人と指定されていなかった相続人からすれば、受取人と指定された相続人との不公平を感じることもあると思います。
以前にも生命保険についての記事は、コラムにて紹介しています。こちらもあわせてご覧いただければと思います。

今回は、こんなケースでは生命保険の扱いはどうなるといった具体的な例をあげながら、相続が発生した場合に、生命保険金が相続財産として扱われるのかどうか説明したいと思います。

目次

生命保険金は相続財産になるのか

生命保険金が、相続財産に含まれるのかどうかについては、生命保険金の受取人を誰に指定しているかによります。
生命保険金の受取人の複数のパターンをご紹介します。

① 生命保険金の受取人が特定の相続人に指定されている場合
② 生命保険金の受取人が特定の相続人ではなく、単に相続人となっていた場合
③ 生命保険の受取人が未指定の場合
④ 生命保険の受取人が相続人以外の第三者の場合
⑤ 指定された生命保険金の受取人が保険金の支払事由発生前に死亡してしまった場合
⑥ 生命保険金の受取人が被相続人本人に指定されていた場合
⑦ 被相続人が生命保険の満期保険に加入していた場合
⑧ 被相続人と生命保険金の受取人が同時に死亡した場合

このような①~⑧のケースごとに例を交えながら生命保険金が相続財産に含まれるのかどうかを解説します。

①生命保険金の受取人が特定の相続人に指定されている場合

【ケース】配偶者を生命保険金の受取人として指定した場合
被相続人Xには、妻と2人の子どもがいました。
被相続人Xは、死亡保険金4,000万円の生命保険を契約しており、受取人として妻を指定していました。Xが死亡したため、妻に4,000万円が保険会社より振り込まれました。2人の子どもは、この4,000万円の生命保険金も遺産分割の対象として、相続財産に含めるべきと主張してきました。

この2人の子どもの主張は認められるかという点ですが、2人の主張は認められません。なぜなら、生命保険金の受取人を相続人中の特定の人に指定した場合には、指定された人の固有の財産となるため、相続財産に含めることはできず、遺産分割の対象にはならないからです。

生命保険金が相続財産に含まれない理由について

生命保険金が相続財産に含まれない理由として、次のことがあげられます。

・死亡保険金を請求する権利は、受取人が被相続人から引き継いで取得する権利ではなく、保険金受取人が受取人自身の権利として取得する権利であるため
・死亡保険金は、もともと被相続人の相続財産に含まれていたものではなく、被相続人が死亡したときに初めて発生する権利であるため

例外的に生命保険を特別受益に準じて持戻しの対象とするケース

特定の相続人が、生命保険金を受け取ることで、他の相続人との均衡が著しく失われるような場合には、例外的に、生命保険金を特別受益に準ずるものにあたると評価することがあります。
特別受益に準ずるものにあたるということは、簡単にいえば、例外的に生命保険金を相続財産に含み、遺留分侵害額請求の対象になることがあるということです。

では、生命保険金は、どのような場合に特別受益に準じた扱いとなるのでしょうか。

生命保険金が特別受益に準じた扱いと評価すべき特段の事情があるかの基準とは?

他の相続人との不公平が著しいと評価すべき特段の事情があるかどうかについては、下記のような要素を総合的に考慮して事案ごとに判断されます。

・生命保険金の額
・相続財産の総額に対する生命保険の金額の割合
・生命保険の受取人である相続人および他の共同相続人と被相続人の関係(たとえば、同居の有無や被相続人に対する介護等への貢献度合いなど)
・各相続人の生活実態

原則としては、生命保険金は、特別受益であることを否定しているので、「特段の事情がある場合にのみ」という点に留意しましょう。
このような特別受益に準じた扱いと評価される生命保険の例についてもご紹介します。

【ケース】生命保険が特別受益となる具体例
被相続人である父親の相続人は、長男、長女と次女の子ども3人です。
父親の相続財産の総額は、900万円でした。また、父親は、死亡する10年前に、父親を被保険者とする死亡保険金4,500万円の生命保険に加入していました。その生命保険金の受取人は、長男となっていました。長男は、生命保険金は相続財産ではなく受取人である自分のものなので、相続財産には含めないと主張しており、また、相続財産については、3人で1/3ずつで分けようと言っています。長女と次女は、この不公平な相続に不満を感じています。

このようなケースの場合、相続財産の総額900万円に対して生命保険の金額は4,500万円と、5倍もの金額にあたるため、生命保険は特別受益に準じたものにあたると評価される可能性が高いです。
この生命保険金を全額持戻すことになれば、みなし相続財産は、5,400万円となります。

長女と次女それぞれの法定相続分は、5,400万円×1/3=1800万円
長男は既に1800万円を超える生命保険金を取得しているので、残った相続財産からは何も取得できません。

もし、生命保険の持戻しをしない場合には、900万円を子ども3人で等分することになるため、長女と次女が受け取る遺産は、1人300万円となります。しかし、生命保険を相続財産に含め、みなし財産として計算することで、長女と次女は残った財産の2分の1を取得できるので450万円を取得できます。300万円との差額である150万円多めに取得できることとなります。

②生命保険金の受取人が特定の相続人ではなく、単に相続人となっていた場合

生命保険金の受取人を単に相続人としていた場合であっても、生命保険金は相続財産とはなりません。
ここでも、生命保険金は、相続人の固有財産と考えられるためです。

生命保険金の受取人である相続人が誰かを相続の法理に基づいて確定したら、それぞれ相続分の割合に応じて、生命保険を受け取る権利の割合も決定します。

そのため、たとえば、生命保険金を受け取る権利のある相続人が、被相続人の配偶者、子ども4人の場合、配偶者が生命保険金総額の1/2を取得し、子ども4人は、生命保険金総額の1/2を4人で等分した額を取得することになります。
ただし、各保険会社の約款には保険金の受取人を相続人とした場合の保険金分配割合が定められていることが多いです。ですから、保険会社にて保険約款の内容を確認しましょう。

③生命保険の受取人が未指定の場合

現在保険会社では、保険金受取人を指定することを勧めていることがほとんどですが、万が一契約者である被相続人が保険金受取人を指定していない場合には、保険金受取人を相続人と指定しているものとして扱うことになっています。

そのため、先ほどの②の相続人が指定されていた場合と同様の対応となるので、この場合の生命保険金も被相続人の相続財産にはなりません。

④生命保険の受取人が相続人以外の第三者の場合

【ケース】生命保険の受取人を愛人にしていた場合
被相続人Xには、妻と2人の子どもがいました。しかしXには、10年以上不倫関係のあるBという愛人がいました。
Xは、死亡保険金6,000万円の生命保険契約に加入し、その受取人としてBを指定していました。
このようなケースの場合、相続人である妻と子どもは、第三者であるBに対して、贈与財産として、この生命保険金を相続財産に算入するべきと主張できるのでしょうか?

最高裁の判決では、第三者を生命保険金の受取人に指定する行為は、贈与・遺贈に準じるものとすることはできないとしました。
なぜなら、このケースの場合にも、生命保険金は保険金受取人固有の権利であると考えられるためです。

しかし、もし保険金受取人として指定されていた人が共同相続人の1人であった場合には、他の相続人との不公平が到底是認できないほど著しいと評価されるべき特段の事情のあるときには、特別受益として評価されます。

⑤指定された生命保険金の受取人が保険金の支払事由発生前に死亡してしまった場合

【ケース】生命保険金受取人に指定されていた人が死亡した場合
Xには、配偶者Wと子どもA、B、Cがおり、Aには、D、Eの子どもがいました。
Xは、生命保険金の受取人をWとして死亡保険金9,000万円の生命保険に加入していました。しかし、Xがなくなる前に、Wが死亡し、次いでAとBも亡くなりました。生命保険金の受取人を変更しないまま、Xも死亡しました。この場合、生命保険金はどうなるのでしょうか。

生命保険契約では、保険金の支払事由が発生する前に保険金の受取人が死亡してしまった場合、保険契約者は、保険金受取人を変更することができます。しかし、変更することなく、契約者も死亡してしまったときには、保険金受取人の相続人全員が保険金受取人となります。

そのため、上記のケースの場合には、C、D、Eが保険金受取人となります。なぜなら、生命保険金受取人である配偶者が死亡したとき、配偶者の相続人となるのは、Xと子どもA、B、Cでした。
しかし、次にAとBも死亡してしまったことで、Aの相続人は、親であるXとAの子どもDとEとなり、Bの相続人は、親であるXとなります。
その後、親であるXも死亡したため、相続人は、残されているCとDとEになりました。

この生命保険金は、相続財産とはならず、判例によれば、民法427条により平等の割合で保険金を取得するとされております。そのため、9,000万円の保険金は、3人で等分するので、各自3,000万円ずつ取得することになり、法定相続分は基準になりません。

⑥生命保険金の受取人が被相続人本人に指定されていた場合

たとえば、被相続人が契約者かつ生命保険金の受取人で、被保険者でなかった場合を考えてみます。

夫(被相続人)が、妻を被保険者とした生命保険を契約し、受取人を夫にした場合に、その契約者である夫が先に死亡した場合には、被相続人が死亡しても保険金は発生しません。
この場合は契約を解約することとなり、解約返戻金を請求できますが、この解約返戻金が相続財産に含まれます。
しかし、保険金受取人が死亡した場合の保険金請求権の帰属については、約款に定めがあると考えられるので、相続財産になるのは稀なケースと思われます。

⑦被相続人が生命保険の満期保険に加入していた場合

生命保険の満期保険というのは、被相続人が終身保険契約ではなく、10年などの期間を定めて生命保険金契約を締結することです。この保険期間が満期となった際に被相続人が、満期保険金を取得することになります。
満期を迎えた際に、被相続人が生きていれば、当然に被相続人の財産となります。

しかし、被相続人が、満期到来後、その支払を受ける前に死亡した場合には、遺産分割の対象となるのかが問題となります。これについては、見解が2つに分かれています。

1つは、預貯金や株式などの金融商品と同様に遺産分割の対象とし、遺産分割協議などにより取得者を決定するという考え方です。
もう1つは、満期保険金請求権は、金銭債権(可分債権)のため、相続人が複数人いる場合には、相続分に応じて権利を承継取得し、 遺産分割の対象にはならないという考え方です。ただし、被相続人が、満期保険金請求権について遺贈または、有効な遺言を作成していた場合には、それに従って満期保険金が承継されることになります。

⑧被相続人と生命保険金の受取人が同時に死亡した場合

【ケース】夫婦が車の事故で同時に亡くなってしまった場合
XとYは夫婦でした。2人には子どもがおらず、Xには、母親A、Yには妹Bがいました。
Xは、Yを生命保険金の受取人とする保険に加入していました。しかし、XとYがのっていた自動車がトラックと衝突し、2人も死亡してしまいました。このケース場合、この生命保険金は、どうなるのでしょうか。

生命保険金の保険契約者と受取人が同時に死亡してしまった場合、お互いに相続は発生しません。そのため、Xは、Yの相続人とはならず、保険金受取人の相続人にもなりません。そうなると、Xの相続人である、母親Aも保険金受取人の相続人にはなりません。
この生命保険金は、Yが受取人であったため、Yの相続人である妹Bに支払われることになります。

生命保険と相続の問題でお困りの場合は弁護士にご相談ください

被相続人が、生命保険の被保険者であり、相続人が生命保険金の受取人である場合は、原則として相続財産になりません。
しかし、上記であげたケースによっては、生命保険金が特別受益に準じるものとして持戻しの対象になる可能性もあるので、生命保険が絡む相続問題についてお困りのことがあれば相続に詳しい弁護士にご相談ください。

また、生命保険について遺留分を請求したい場合にも、遺留分に関する法律の知識が必要になってきますので、弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士法人シーライトでは、相続に関する様々な相談を受け付けております。お気軽にご相談ください。



弁護士 阿部 貴之 写真 弁護士法人シーライト

代表弁護士 阿部 貴之

神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。依頼相続トラブルの相談実績は400件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介

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