よくあるご相談
1.父が買ってあげた兄の仕事用の車は特別受益?
- 遺産
- 特別受益
- 遺産分割
父が亡くなりました。相続人は母と私と兄の3人です。
母は認知症で自宅(実家)での生活ができるように、介護施設でリハビリ中です。実家に住んでいる兄は、個人事業主として建設関係の作業員をしていますが、コロナの影響もあって、あまり仕事がうまくいっていないようです。
そうかといって、兄は母の介護をするわけでもなく、家でブラブラしていることもあります。例えば、ローテーションで父の食事の世話をしようと決めたのに、兄はすっぽかしたりしました。そういったことも重なって、不満があるので、父の相続ではいうべきことを言おうと思っています。母は認知症なのですがこのまま遺産分割協議を進めてよいのでしょうか。
また、兄は父から300万円相当の車を買ってもらい、それに工具を積んで仕事用に使っていたのですが、これは特別受益の持ち戻しの対象になりますか?
2.弁護士からの回答
2-1 成年後見と相続
相続人は3人で、お母様が認知症だと伺いました。遺産分割協議は、相続人全員で行なう必要があります。すでに認知症の診断を受けている方が遺産分割協議をできるのか?というと、結論としては、遺産分割協議をできない可能性があります。
理由は、法律行為である遺産分割協議をするためには、自分のやっていることがどういうことで、どういう効果があるのかを分っていないといけない(意思能力)ところ、認知症の方の場合この意思能力が認めあれない可能性があるからです。 しかし、これではいつまでたっても遺産分割協議ができません。そこで、成年後見制度を利用して、成年後見人等が遺産分割協議を行なうことになる旨を説明しました。
2-2 特別受益の持ち戻し
特別受益の持ち戻しとは、共同相続人間において遺産の前渡しを考慮して相続分を算定することで実質的公平を図る制度です。 例えば、被相続人(お亡くなりになった方)に「会社を興すための新規開業資金を出してもらった」相続人がいる場合、これらを考慮せずに遺産分割しようとすると、不公平が生じますので、贈与された開業資金を相続財産に戻して(持ち戻し)から相続分を計算することで、公平を図ります。
特別受益の対象になるのは、「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与」(民法第903条第一項)です。 このご相談にあてはめると、本来であれば、仕事用の車は自分で買うべきところ、お父様に買ってもらいました。これは、生計の資本にあたりますので、特別受益の持ち戻しをすることになるとお伝えしました。
弁護士法人シーライトでは、亡兄の子から使い込みを主張された事案において、母が亡兄の入院費や仕送り、葬儀費など多額の費用を負担しており、これは亡兄の子にとって特別受益にあたると反論した事案などがあります。お気軽にご相談下さい。
代表弁護士 阿部 貴之
神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。以来相続トラブルの相談実績は400件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介