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不要な土地を相続放棄する場合の手続きや注意点について解説

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相続財産の中にいらない土地があった場合、その土地を相続しない方法として相続放棄があります。いらない土地とは、たとえば、山林や農地などがあげられます。他にも、相続人が遠方に住んでいるために空き家となってしまった実家なども考えられます。
そのような不要な土地を相続しそうだけれど、活用方法が見つからず、本人にとっては、持て余しそうな資産の場合には、相続放棄をすることで、その不要な土地の相続を回避することができます。しかし、相続放棄をするうえで注意点もあるので、今回は、相続放棄をする場合の手続や注意点について解説します。

目次

相続財産の中にある土地を相続放棄するべきかどうかの判断について

相続の中に土地がある場合には、相続人にとってマイナスの資産となる可能性もあります。土地の中にも、都心にある土地もあれば、山林や農地などといった土地もあります。そのため、その土地がある場所や状態によっては、活用方法が見つけられず、保有しているだけでは、相続人の資産がプラスになるどころか、むしろマイナスになっていく可能性があります。土地を相続した場合には、どのような土地であっても毎年の固定資産税などの租税公課をはじめ、その土地を維持管理していくための費用が発生します。また、土地を相続すると近隣の住民などに迷惑をかけないように土地の管理責任を負うことになります。

たとえば、山林を相続したものの管理責任を怠ったことで、大雨の後、崖崩れを起こしてしまい、それによって隣地に住んでいる住人に害が及んだなどの問題が発生すると損害賠償責任を負う可能性もあります。そのため、土地を相続する際は、ご自身にとって有効活用できそうな土地なのか、売却することができそうな土地なのか、維持し続けることは難しく相続放棄を行うべきなのか、慎重に見極める必要があります。土地を含む遺産を相続放棄するかどうか、相続放棄のメリット・デメリットの両面から判断していく必要があります。

相続放棄で土地の相続を回避することのメリットについて

1.不要な土地の管理から解放される

遠方の土地や管理が難しい山林や農地などを管理する必要がなくなります。
※ただし相続放棄の時点で現に占有している相続土地については、他の相続人または相続財産清算人に引き継ぐまでは保存義務があります。のちほど、この相続財産清算人については解説します。

2.被相続人が生前に負っていた債務を支払わずに済む

相続放棄をすることで借金などの債務を相続する必要がなくなります。

3.被相続人の遺言がない場合、遺言が無効の場合にも、遺産分割協議への参加が必要ない

相続放棄することで、遺産分割協議への参加資格を失います。他の相続人との仲が険悪な場合などに、遺産相続に関わりたくないと考えているときは、相続放棄を検討するのも1つの方法です。

土地を相続放棄することのデメリットについて

1.相続放棄をすると、他の遺産も相続できなくなる

相続したくない土地だけの相続放棄はできません。相続放棄は、被相続人の相続財産に関する一切の権利義務を放棄することです。そのため、資産価値の高い遺産だけは相続して不要な土地だけ相続放棄をすることはできません。相続放棄をすれば、そのような価値のある遺産も相続することはできなくなります。

2.他の相続人がいる場合には、相続権が移動し、トラブルに発展する可能性がある

相続できる法定相続人には、相続順位があります。相続放棄をすることで同順位の相続人がいなくなると、次の順位の相続人へ相続権が移動することになります。たとえば被相続人に配偶者と子どもが1人いる場合、相続人は、その配偶者と子どもになります。もし、子どもが相続放棄をすると、被相続人の親が存命の場合には、親に相続権が移り、親を含めた直系尊属人が全員他界していれば、被相続人の兄弟姉妹に相続権が移ります。リスクが起こりそうな土地の相続権が、被相続人の子どもから後順位の法定相続人に移るような場合には、親族間トラブルのきっかけになる可能性があります。

では、相続放棄をしたほうがよい場合と相続放棄をしないほうがいい場合について一例をご紹介します。

相続財産である土地を相続放棄したほうがよいケース

自身での土地の管理が極めて難しく、近隣住民や第三者とのトラブルになる可能性が高い土地のため、他の遺産を手放してでもそのトラブルになるリスクを解消した方がいい場合
⇒たとえば、山林での崖崩れや都心から離れている空き家となっている実家が老朽化している場合など

被相続人が多額の負債を負っていたため、プラスの資産よりマイナスの資産の方が多い状態の場合

被相続人と疎遠であったので、遺産について全く関心がない場合

などのケースがあります。

相続財産である土地を相続放棄しないほうがよいケース

相続する予定の中に土地以外のものがあり、それが高額の遺産のため、その収益によって土地の管理コストをカバーできるような場合

先祖代々引き継がれてきた遺産があり、どうしても手放したくないような場合

などのケースがあります。
相続放棄のメリット、デメリットをふまえ、実際に相続放棄をするとなった場合には以下の点を確認する必要があります。

相続放棄の期限を過ぎていないかの確認

相続放棄は原則として、相続開始を知ってから3か月以内に行わなければなりません(民法915条1項本文)。もし、3か月の期限が経過すると、原則として相続放棄が認められなくなってしまいます。例外的に、3か月の期限を過ぎてしまっても相続放棄が認められる場合があります。たとえば、相続発生時に相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときにあとから借金の存在が判明したときは、期限後でも相続放棄が認められることがあります。ただし、期限を過ぎた相続放棄を認めるかどうかについては、家庭裁判所の判断になります。もし、期限を過ぎた相続放棄についてお困りの場合には、弁護士に相談してみることで、相続放棄が認められる可能性もあります。3か月という短い期間で、相続放棄をするにあたり、財産の調査や戸籍書類の取得などを行う必要があります。もし、相続放棄の期限に間に合わない場合には、家庭裁判所に期間の伸長を請求することができますが、相続放棄を検討している場合には、早めに準備することが大切です。

相続財産の全部または一部を処分していないかの確認

3ヶ月という期限の前であったとしても、被相続人の財産の全部または一部を処分してしった場合には、原則として単純承認したとみなされ、相続放棄が認められなくなってしまいます。単純承認とは、相続人が被相続人の財産や負債をすべて引き継ぐことです。たとえば、被相続人が所有していた古い車を勝手に売却したり、定期預金を解約したりしてしまうと、相続放棄ができなくなってしまう可能性があります。また相続放棄をした後であっても、相続財産の全部または一部を消費してしまうと相続放棄が無効となってしまいます。もし、相続放棄を検討している場合には、基本的に被相続人の遺産には一切手を付けないようにすることがよいでしょう。もし、処分していいかどうかの判断に迷った場合には、事前に相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄の手続について

1.相続放棄に必要な書類をそろえる

まず、相続放棄に必要な以下の3種類の書類を用意します。
・相続放棄申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申し立てる人の戸籍謄本
※相続放棄申述書については、20歳以上か20歳未満かで様式が異なります。
※上記の3種類の書類のほかにも、申し立てる人によって追加で必要なc。

①申立人が被相続人の配偶者の場合

上記の3種類の書類に加えて、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

②申立人が被相続人の子どもや孫(代襲者)の場合

上記3種類の書類に加えて、下記の書類が必要です。

被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

申立人が孫の場合には、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

③申立人が被相続人の両親や祖父母(直系尊属)の場合

上記の3種類の書類に加えて、下記の書類が必要です。

被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

被相続人の子どもで死亡者がいれば、その子どもの出生時から死亡時までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

被相続人の直系尊属に死亡者がいれば、その者の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

④申立人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪の場合

上記の3種類の書類に加えて、下記の書類が必要です。

被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

被相続人の子どもで死亡者がいれば、その子どもの出生時から死亡時までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

申立人が甥姪の場合、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

2.財産調査を行う

相続放棄は、一度行ってしまうと撤回ができません。そのため、相続放棄を行うかどうかは慎重に判断する必要があります。たとえば、相続放棄の手続が終了した後に、負債を上回る預貯金があったことが判明した場合でも、相続放棄の撤回はできないので、事前にプラスの遺産・マイナスの遺産がそれぞれどれくらいあるのかを調査します。被相続人の預貯金については、各金融機関から死亡時時点の残高証明を取り付けるなどして確認します。相続財産に不動産があるかどうかは、固定資産税通知書や名寄帳などで確認できます。

もし、ご自身で財産調査の進め方がわからない場合には、弁護士に相続財産調査を依頼することもできますので、相続放棄を検討されている場合には相談するのも1つの方法です。

3.家庭裁判所に相続放棄の申立てをする

財産調査を行った結果、相続放棄をすることを決めたら、家庭裁判所へ相続放棄の申し立てをします。申し立てをする家庭裁判所は、被相続人の住民票の届出のある場所を管轄する裁判所となります。家庭裁判所には、「1. 相続放棄に必要な書類をそろえる」で紹介した相続放棄の申述書と必要書類を提出します。注意点としては、もし書類等に不備があると相続放棄が却下されてしまう場合があるという点です。却下されて審判が確定してしまうと、再度相続放棄の申立てをすることができません。

万が一却下された場合には、即時抗告という不服申立てをする手段もありますが、手続が煩雑です。ですから、確実に相続放棄をするためには不備が起きないように注意しなければなりません。しかし、相続放棄の申立てについては、相続放棄のデメリットでも述べたように、原則相続が始まったことを知ってから3ヵ月以内に行うという期限があります。その短い期間で、きちんと準備を相続放棄の手続を行うのは、大変な労力となります。このような手間のかかる作業を弁護士に依頼することもできますので、ご自身で行うのは、大変そうだと感じられた場合には弁護士に相談していただくことをおすすめします。

4.相続放棄申立て後に照会書が届く

家庭裁判所に相続放棄の申し立てをすると、後日家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されます。送付書には回答を記入する欄があるので、必要事項を記入して家庭裁判所へ再送します。

5.相続放棄が認められると相続放棄申述受理通知書が届く

家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付されます。この通知書が届くと、相続放棄が正式に認められたことになります。

相続放棄をした後の注意点

ご自身が相続放棄をしたとしても、万が一相続放棄の時点で、相続財産である土地を現に占有している場合には、その放棄した土地についても、自己の財産と同様に注意をする保存義務が発生します。これを相続放棄後の「保存義務」といい、民法で定められています。この相続放棄後の保存義務は、対象財産を他の相続人もしくは、相続財産清算人に引き渡すまで続くことになります。ご自身の保存義務が継続している間は、下記のような対応を行う必要があります。

保全義務の一例

故意または重大な過失により、土地が滅失または損傷しないように注意する

他の相続人または相続財産清算人の請求に応じて、土地の保存状況を報告する

他の相続人または相続財産清算人に土地を引き渡した後、それまでの保存の経過および結果を遅滞なく報告する

土地を保存する過程で受け取った金銭その他の物を、他の相続人または相続財産清算人に引き渡す

土地に関して、自己の名で取得した権利を他の相続人または相続財産清算人に移転する

もし、土地の保全義務によって費用が発生した場合には、引き継いだ他の相続人または相続財産清算人に対して、利息を付して償還するよう請求することができます。また、土地の保存に必要と認められる債務を負担した際にも、引き継いだ他の相続人または相続財産清算人に対して支払うことを請求することができます。

相続財産清算人について

相続財産清算人の制度は、2023年4月1日に施行された民法改正より前には、相続財産管理人という名称でした。相続財産清算人と相続財産管理人の違いは、下記表のようになっています。

  相続人がいない場合の相続財産の管理・清算を行う 相続財産の管理のみを行う
民法改正前 相続財産管理人 なし
民法改正後 相続財産清算人 相続財産管理人

上記の表のように、民法改正により、従来の相続財産管理人の役割を担うのが相続財産清算人となり、従来の相続財産管理人は、権限が相続財産の管理に限定されることとなりました。

相続人すべてが相続放棄した場合には、不要な土地はどうなるのか

もし、現に占有する相続人が誰もいない不要な土地などを、相続人のすべて人が相続放棄した場合には、その土地はどうなるのでしょうか。そのような場合には、相続財産清算人の申立てを利害関係者(債権者など)や検察官が行うこととなります。家庭裁判所に選任された相続財産清算人が保存を行い、債務を支払うなどして清算し、公告手続きによって相続人がいないことを確認した上で、特別縁故者への財産分与などを経て、残った相続財産を国庫に帰属させることになります。つまり、誰も引き継ぐ人間がいない土地については、最終的に国に帰属されることになります。その作業を行うのが相続財産清算人となります。

土地を相続放棄できない場合の対処方法

他に相続したい遺産があるため、不要な土地を相続放棄できない場合、相続放棄の期限が過ぎてしまい申立てができない場合や被相続人の財産の一部を処分してしまい単純承認したとみなされ相続放棄ができない場合には、相続土地国庫帰属法を利用する方法があります。相続土地国庫帰属制度については、令和5年4月27日から制度がスタートします。

相続土地国庫帰属制度について

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得した土地を国に引き取ってもらえる制度です。そのため、売買や贈与などによって取得した土地については、対象外となります。相続放棄と違い、他の遺産を相続しながら、不要な土地だけを手放すことができます。 相続土地国庫帰属制度について利用を希望する場合には、法務局または地方法務局へご相談ください。しかし、この相続土地国庫帰属制度を利用するには、費用がかかります。

審査手数料と負担金の納付が必要

相続土地国庫帰属法を利用して、土地を国庫に帰属させるためには、一定の費用を負担する必要があります。土地の放棄に必要な負担金は、審査手数料の他、承認後の負担金として10年分の土地管理費相当額の納付が必要とされています。他にも土地によっては、建物の解体費用や境界確定の測量費用が発生することもあります。負担金額については、あらかじめ法務局または地方法務局へ確認する必要があります。しかし、土地の状態によっては、相続土地国庫帰属制度を利用できないことがあります。

相続土地国庫帰属法を利用できないケース

相続土地国庫帰属制度を利用して国庫へ帰属させることができるのは、却下事由および不承認事由がいずれも存在しない土地に限られます。そのため、下記に該当するときは、制度を利用することができません。

①却下事由(申請することができない場合)

A 建物がある土地
B 担保や使用収益を目的とする権利が設定されている土地
C 通路用地、墓地、境内地、水道用地、用悪水路、ため池が含まれる土地
D 有害物質により土壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

②不承認事由(承認を受けることができない場合)

A 勾配30度以上・高さ5メートル以上の崖があって、管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する工作物、樹木などの有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 以下の状態で、他の土地の通行が妨げられている土地
・公道へ通じない土地
・池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に至ることができない土地
・崖があって公道と著しい高低差がある土地
E 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
F その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

却下事由がある土地は申請ができません。不承認事由がある土地は国庫帰属が不承認となってしまいます。

不要な土地の相続放棄について悩まれている場合には弁護士にご相談ください

不要な土地の相続放棄は、放棄後の保存義務の問題などもあるため、複雑になることがあります。また、しっかりと財産調査を行わずに相続放棄を選択することで、結果的に損をしてしまうおそれもあります。短い期間で相続放棄をするかどうかの判断をしなければならないため、ご自身での判断が難しい場合には、相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼することで、相続財産の調査や相続放棄の手続なども一貫して任せることができます。弁護士は、ご相談者様のお話を伺い相続放棄をするべきかどうかの判断や確実な相続放棄の手続を行うことができます。弁護士法人シーライトでは、相続放棄についての相談も受け付けております。お気軽にご相談ください。



弁護士 阿部 貴之 写真 弁護士法人シーライト

代表弁護士 阿部 貴之

神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。以来相続トラブルの相談実績は400件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介

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