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お墓は誰が相続するのか?相続方法と手続について

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親が他界してしまい、不動産や預貯金などの相続と同時に考える必要がある問題がお墓の相続についてです。多くの人が相続の準備を行う際に意識するのは、不動産、預貯金や証券といった財産についてですが、お墓も、先祖代々受け継がれているものであり、相続をどうすべきか、という点についてきちんと考える必要があります。
今回は、お墓は誰が相続するのか?その相続方法と手続に関してご紹介します。

目次

お墓の相続について

お墓の相続は、預貯金や不動産などの相続財産とは異なった財産と位置付けられています。そのため、お墓は、遺産分割の対象とはなりません。なぜなら、お墓は、以前から家督相続の特権に属するものとされていたことから、現在でも一般の相続財産ではなく祭祀(さいし)財産として扱われています。祭祀財産とは、先祖をまつるための資産のことを指します。民法では祭祀財産について、系譜、祭具、墳墓の3種類で構成されているものと定めています。

①系譜とは

先祖以来の家系(系統)を指し、家系図や過去帳などになります。

②祭具とは

祖先の祭祀・礼拝の用に供されるものを指します。たとえば、位牌や仏壇、仏具、神棚、神体などが典型的な祭具です。ただし、純金製の仏具や骨董的仏像等が祭祀と無関係の資産として保有されていた場合には、相続財産として遺産分割の対象となる可能性もあります。

③墳墓とは

遺体や遺骨を葬っている設備を指します。墓石、墓碑、埋棺などになります。また、既にお墓に納められている、先祖の遺骨についても、墳墓と一体のものとして扱われます。ただし、被相続人の遺骨は、先祖の遺骨とは異なり、墳墓と一体のものとしては扱われませんが、被相続人の遺骨及び遺体については、祭祀承継者に所有権が帰属すると考える見解が有力です。また墓地を維持するために必要な土地の所有権や墓地使用権についても祭祀財産に準じて扱われます。墓地使用権というのは、端的にいえば、特定区画の中に墳墓を設置し、遺骨・遺品等を埋蔵・埋設することができ、かつ当該特定区画に至るまでの通路を通行することができる権利ということです。このような祭祀財産は、相続人ではなく、祭祀を承継する人が引き継ぐことになります。この点において、被相続人の相続財産との扱いと異なります。そのため、たとえば、被相続人の遺した遺言書では、全ての遺産を次男に渡すとなっていた場合でも、お墓に関しては、遺産ではないので、長男がお墓に関してのみ引き継ぐということもできます。このように相続財産と祭祀財産は、異なる財産とされているため、相続が発生した場合には、両方について決めていく必要があります。

お墓は誰が相続するのか?

お墓を相続するのは祭祀承継者(祭祀主宰者)となります。祭祀承継者は、祭祀財産を承継し、管理する者です。祭祀承継者の選び方については、民法897条に定めがあります。

民法897条
1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2項 前項の本文において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

祭祀承継者は、法律上、下記の1から3の優先順位で決定されます。

1.被相続人が指定する

被相続人が生前に祭祀承継者を指定していれば、その指定されていた人が祭祀を承継します。指定方法は、生前に口頭で指定することも、遺言のように書面で指定することもできます。指定の仕方については、口頭や書面を問いません。お墓の相続については、法定相続人の順位などによっては決まりません。もっとも、相続開始後にお墓の相続について、トラブルを防ぐためには、公正証書遺言に遺しておくことをおすすめします。法律上、祭祀承継者は、親族に限られず、縁故者や墓地管理者などを指定することもできます。しかし、墓地規則において、墓所の承継者を相続人や3親等内の親族と限定している場合もありますので、墓地管理者に確認する必要があります。

2.慣習によって決定する

被相続人による祭祀承継者の指定がない場合は、原則として被相続人の住所がある地域や被相続人の家族の慣習や、出身や職業等の慣習などに従って祭祀承継者が決まります。この慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が祭祀承継者を定めます。

3.家庭裁判所が決定する

被相続人の指定がなく、慣習も明らかでない場合には、相続人などの利害関係人が申立てを行い、家庭裁判所が祭祀承継者を決定します。誰が祭祀承継者として適しているのかについて家庭裁判所で調停または審理がなされます。なお、祭祀承継者の指定の場合は、調停をせずに審判を申立てることもできます。調停で話合うことで祭祀承継者が決定される場合もありますが、もし調停が不成立になったときには、家庭裁判所が審判により祭祀承継者を指定することになります。

具体的には、承継候補者と被相続人との間の身分関係や過去の生活関係及び生活感情の緊密度、承継候補者の祭祀主宰の意思や能力、職業、生活状況、その他利害関係人全員の生活状況および意見、被相続人に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情などを総合考慮し、他方、被相続人が生存していたのであれば、おそらくこの人を祭祀承継者に指定したであろうという人を指定します。また、祭祀承継者は原則として1人とすべきと考えられていますが、特別の事情がある場合には、祭祀承継者を複数人指定することが許される場合があります。
過去の裁判例で、墓地が2か所に分かれている場合で、各墓地についてそれぞれ別の祭祀承継者を指定し2人以上の者が分割承継と認められたり(東京家審昭和49年2月26日家月26巻12号66頁)、二つの家の墓として代々祭祀されてきた墓地について、2人を共同承継者(仙台家審昭和54年12月25日家月32巻8号98頁)として指定することが認められたりしました。なお、祭祀財産を2人に分けて承継することが認められたこともあります(東京家審昭和42年10月12日家月20巻6号55頁)。

祭祀承継者の主な役割について

祭祀承継者の主な役割は、以下のようなことになります。

①お墓や仏壇等の管理

祭祀承継者は、祭祀を行うことについて法的な義務を課されるわけではありません。しかし、お墓の維持管理を行う必要が生じることが多いです。たとえば、墓地の管理者に支払う管理費を負担する必要があります。

②ご遺骨の管理処分方法の決定やお墓の購入などについての検討

祭祀承継者は、ご遺骨をどのように管理処分するか、どういったお墓を購入し、どこに建立するのか、既にあるお墓を別の場所に移転するかどうかなどについて決めることができます。

③忌日法要等の実施

必ずしも、祭祀承継者が法要等をしなければならない義務はありません。しかし傾向として、四十九日などの忌日法要やお盆の法要などの行事は、祭祀承継者が主催して実施することが多いと思われます。

祭祀承継者の指定を求める手続について

お墓の承継の手続について解説します。祭祀承継者が決定したら、祭祀承継者となった人が、相続する墓地の管理者に連絡を入れて名義人の変更をしなければなりません。お墓の名義変更というのは、墓地使用契約の契約上の地位を変更することです。墓地の使用は、墓地の管理者である寺院との墓地使用契約によって認められます。その契約上の地位の承継については、寺院との間で手続が必要となります。その際には以下のような書類を用意する必要があります。

一般的にお墓の相続に必要となる書類

名義変更の申請書

墓地使用許可証、永代使用権承諾証などの書類

承継原因がわかる資料(戸籍謄本など)

承継者の戸籍謄本や住民票

承継者の印鑑登録証明書

遺言書、親族による同意書など祭祀承継者であることを証明する書類

しかし、墓地によって手続方法が多少異なるので、墓地の管理者に確認を取りましょう。例えば、一定範囲の親族全員の同意書を求める墓地もあれば、承継者として不自然ではない者からの承継申請であれば、承継を認める墓地もあります。
また、お墓の承継の際には、費用が発生します。さらにお墓を相続すると維持管理するための費用がかかります。もしお墓で災害や倒壊などのトラブルが発生したときには、祭祀承継者が対応を求められることになります。

祭祀承継者と墓地使用者が異なるケースについて

親族のお墓の場合には、被相続人の祭祀承継者と、親族のお墓の墓地使用者が一致しないということもあります。たとえば、被相続人の祭祀承継者が、被相続人の配偶者で、墓地使用者が被相続人の兄弟姉妹となっている場合、祭祀承継者と墓地使用者が異なることとなります。このようなケースの場合には、遺骨の所有者は配偶者となります。墓地に納骨された遺骨を改葬するために配偶者が遺骨の引渡しを求めた場合には、墓地使用者である被相続人の兄弟姉妹はそれに応じる必要があります。

お墓の生前承継について

お墓の承継に関しては、お墓の承継権利者である被相続人が亡くなった後に承継されることが通常です。しかし、お墓の承継が必ずしも被相続人の死亡後でなければならないということではなく、法律でも離婚した場合及び養子縁組の取消による離縁の場合において、祭祀承継者の生前の変更が認められています。また、法律上の生前承継(離婚や離縁)ではないけれど、生前承継を認めないことで墓地の適正な管理に支障をきたす場合には、生前承継を認める必要があるとも考えられています。たとえば、下記のような状況が生前承継を認める必要があるケースです。

1.祭祀承継者(権利者)が遠方に居住しているために墓地管理が難しい場合

2.祭祀承継者が高齢であったり病気であったりすることによって墓地管理が困難となった場合

3.祭祀承継者が海外に居住し、引き続きの祭祀承継が困難となった場合

上記のような場合には、生前承継を認めてもらう必要があります。しかし、実際に認めてもらえるかどうかは、墓地管理者との協議によることになります。なお、公営墓地の条例や民間墓地の規則では、生前承継を認めている例もありますので、墓地の管理規則を確認するのが良いといえます。

お墓の相続放棄はできるのか?

お墓は祭祀承継者が相続します。前述したように、お墓は相続財産ではないため、相続放棄の対象にはなりません。では、お墓を相続したくない場合にはどうすればよいのでしょうか?

お墓を相続したくない場合

お墓を相続したくない場合、以下のように対応することができます。

改葬の検討

現在のお墓の場所が遠方であったり、交通の便が悪い場所であったりして、祭祀承継者になることを迷っているといった事情があれば改葬を検討することも方法の1つです。改葬とは、埋葬したご遺体を他のお墓に移したり、埋蔵又は収蔵した焼骨を他のお墓や納骨堂に移したりすることをいいます。改葬することで、ご自宅近くの便利な場所にお墓を移すことなどができます。

特別祭祀承継制度の利用(被相続人が存命の時)

誰も祭祀承継者になる予定の人がいない場合には、特別祭祀承継制度を利用することもできます。特別祭祀承継制度とは、生前に被相続人が公正証書遺言で墓地経営者を祭祀承継者として指定し、被相続人が他界した後は、祭祀承継者として墓地経営者が、建立されているお墓に被相続人を納骨し、契約した期間はそのお墓で供養する制度です。先祖代々のお墓に被相続人自身も入ることを希望する場合に利用できる制度になります。契約期間が満了すると、祭祀承継者である墓地経営者が、被相続人のお墓を墓じまいして、焼骨は永代供養墓に移されます。 この特別祭祀承継制度を利用すれば、承継者がいないことでお墓が荒れ墓になる状況を防ぐことができます。

誰も相続したくない場合(被相続人が他界した後)

被相続人が他界してしまい、特に指定もないというときには、墓石を撤去し墓所を更地にして使用権を墓地の管理者に返還して墓じまいをする方法もあります。

お墓の相続に相続税はかかるのか?

お墓は、祭祀財産なので、相続財産に課される相続税はかかりません。相続税法の12条2号に「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」が相続税の非課税財産となることが規定されています。国税庁のホームページの相続税法解釈通達12-1に、墓所、霊びょう、祭具等関係については、下記のように記されています。

【相続税法基本通達12-1】
「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むものとして取り扱うものとする。
【相続税法基本通達12-2】
「これらに準ずるもの」とは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいうのであるが、商品、骨とう品又は投資の対象として所有するものはこれに含まれないものとする。

となっています。
そのため、仏壇仏具も含めて祭祀財産には基本的に相続税が課税されません。ただし、お墓の生前譲渡をする場合は、相続税ではなく贈与税を課税される可能性があります。贈与税に関しては、相続税の場合と異なり、お墓に関する定めがありません。そのため、お墓を生前贈与する場合には、この点に注意する必要があります。

お墓の相続についてお困りの場合は、弁護士にご相談ください

お墓の相続については、いくつかのパターンでもめてしまうことがあります。お墓の承継人を誰にするのかでトラブルになるケース、誰もお墓を相続したくないケース、お墓の相続がきっかけとなり相続財産の分割についてトラブルに発展するケースなどがあります。

お墓の祭祀承継者を希望する人が複数人出てきてしまった場合には、お墓の承継人が決まらないことで墓地管理者に複数の相続人がいる場合、誰が親のお墓を相続するかでもめるケースがよくあります。長男と二男がそれぞれ「自分がお墓を承継する。」と言って譲らず、祭祀承継者が決まらないと、墓地の管理運営にも支障をきたすことにもなりかねません。
逆に、お墓のある場所が遠方のために、誰もお墓の相続を希望しないといったケースでもめてしまうこともあります。このような場合にも、祭祀承継者が決まらないことで、お墓の管理費が滞納状態となってしまうと墓地の管理者にも迷惑をかけてしまいます。他にも、祭祀財産は、遺産ではないため、相続人の同意がなければ、祭祀に関して必要な支払を遺産から控除することはできません。祭祀を承継した人の負担で、祭祀を主宰しなければならず、この点で、認識が異なっていると、後で、他の相続人とトラブルになることがあります。
たとえば、祭祀を承継することになった人が「お墓を承継すると費用がかかるので、遺産から先取りさせてほしい。」と言いだし、遺産分割協議の話合いがまとまらなくなってしまうといったケースが考えられます。

このようなお墓の相続に関しては、あらかじめ墓地使用契約・規則の整備したほうがよいでしょう。しかし、それでもお墓の相続についてトラブルに発展してしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。



弁護士 阿部 貴之 写真 弁護士法人シーライト

代表弁護士 阿部 貴之

神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。依頼相続トラブルの相談実績は400件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介

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