寄与分の具体例
寄与分とは、共同相続人の中に被相続人の財産の維持または、増加に特別な貢献をした相続人がいる場合、相続人同士の公平のために、これを相続分算定の際に考慮することです。
簡単にいえば、相続人が複数人いる共同相続人のうち、被相続人を看病したり、介護したり、被相続人を助けるために労働をしたりして被相続人の財産に貢献した者(他の人に払うべきところ支出をせず、財産を減らさなかったことも含みます)に対して支払われる一定の補償のことです。
寄与分の具体例をご紹介します。
目次
寄与分が認められるために必要な条件とは
寄与分が認められるには、以下のような要件を満たす必要があります。
要件を満たした場合に、寄与分として認められます。
1.相続人である
2.特別の寄与である
寄与分が認められるためには、「特別の寄与」が必要となり、単なる寄与では認められません。
ただし、特別の寄与であると認められるにも、そのハードルは高く、たとえば、扶養義務があると、夫婦や親子として介護をした場合には、扶養義務の範囲内と言われ「特別の寄与」と認められないと考えられます。
「特別の寄与」である基準としては、被相続人と相続人の身分関係に基づいて、通常期待されるような程度の貢献を超えるような貢献があった場合とされています。
3.被相続人の財産や遺産が維持された、または、増加した
4.寄与行為と財産の維持・増加の間に因果関係がある
寄与分が認められるためには、上記の条件を満たす必要があり、簡単に認められるものではありません。
上記の条件を満たした場合に、認められる寄与分の具体的な金額を示した例をご紹介します。
寄与分の具体例1
父親が死亡し、遺産は4000万円、相続人は、長男と次男の2人の場合。
父親は亡くなるまでの5年間、寝たきりの状態でしたが、同居していた長男は、父親を老人ホームに入れずに介護を続け、その結果浮いた介護費用のうち500万円が寄与分と認定されました。
計算方法1
相続財産から寄与分を差し引きます。
みなし相続財産:4000万円(遺産)ー500万円(長男の寄与分)=3500万円
※みなし相続財産とは、計算上、減った遺産のことをいいます。
計算方法2
法定相続分に従い計算します。
法定相続分は、子供が2分の1となります。
長男の相続分:3500万円 × 1/2= 1750万円
次男の相続分:3500万円 × 1/2= 1750万円
計算方法3
長男の相続分に寄与分を加えます。
1750万円 + 500万円 = 2250万円
寄与分の具体例2
父親が死亡し、遺産は5000万円、相続人は、妻と長女と次女の3人の場合。
長女が父親の生前に、事業を手伝っており、父親の資産形成に貢献し、1000万円が寄与分と認定されました。
計算方法1
相続財産から寄与分を差し引きます。
みなし相続財産:5000万円(遺産)ー1000万円(長女の寄与分)=4000万円
計算方法2
法定相続分に従い計算します。
法定相続分は、配偶者が2分の1、子供が2分の1となります。子供が2人なので、1人あたり4分の1ずつとなります。
妻の相続分: 4000万円 × 1/2 = 2000万円
長女の相続分:4000万円 × 1/4 = 1000万円
次女の相続分:4000万円 × 1/4 = 1000万円
計算方法3
長女の相続分に寄与分を加えます。
1000万円 + 1000万円(寄与分)= 2000万円
寄与分の分類
家業従事型
被相続人の営む事業に対し、無報酬で従事して労務を提供し、財産の維持・増加に貢献した場合です。
なお、被相続人が法人を設立して代表者に就任する形態で事業を営む場合には、相続人の労務提供は法人に対して行われたものと評価されるため、原則として寄与分は認められません。
金銭等出資型
被相続人やその事業に対して、財産上の給付又は財産的な利益を提供し、財産を維持・増加させ被相続人の財産の維持に貢献した場合です。不動産購入費や医療費,施設入所費などになります。
療養看護型
被相続人の療養看護を無報酬で行い、本来であれば被相続人が負担すべき医療費や看護費用等の支出を削減することによって、相続財産の維持に貢献した場合です。
扶養型
相続人が被相続人を扶養した結果、被相続人の生活費の支出を減少させその財産の維持に貢献した場合です。
財産管理型
例えば、被相続人が所有する不動産に賃借人が存在する場合、相続人が賃料の回収などの賃貸管理業務を行ったことで、被相続人が管理費用の支出を免れ、結果として被相続人の財産の維持が図られた場合です。
まとめ
寄与分を認めてもらうためには、説得的な主張と裏付けの証拠を提出する必要があります。寄与分を認めてもらえず、法定相続分どおりに分けるのでは納得ができないという方は、弁護士法人シーライトにご相談ください。
代表弁護士 阿部 貴之
神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。以来相続トラブルの相談実績は400件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介