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遺留分侵害額の請求方法は、裁判だけ?~遺留分問題を弁護士に依頼するメリットとは~

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被相続人が遺した遺言が、「全財産を長男に相続させる」という内容の場合や、相続開始時点では、相続できる財産がないものの、被相続人が10年以内に、特定の相続人に対して特別受益にあたる贈与を行っていた場合などには、他の相続人の遺留分を侵害していることがあります。

遺留分は、特定の法定相続人が相続することのできる最低限の取り分であり、この遺留分を確保するための手続が遺留分侵害額請求になります。

遺留分侵害額の請求方法は、裁判以外の方法もあります。
しかし、この請求手続を進めるにあたっては、さまざまな選択肢があるものの、法律を熟知していない個人が対応していく場合、手続がスムーズに進まないことも少なくありません。そのため、遺留分侵害額の請求を検討している場合には、相続に詳しい弁護士に依頼することも重要となります。

目次

遺留分侵害額請求とは?

遺留分侵害額請求とは、被相続人が遺言や生前贈与により特定の相続人や第三者などに過度な財産を譲渡した場合、遺留分を侵害されている相続人が、遺留分に満たない不足分について請求する手続になります。
請求相手は、遺留分を侵害している相手になります。

遺留分が認められる特定の相続人とは、配偶者、直系卑属(子どもまたは孫など)、直系尊属(親または祖父母など)の中で、法定相続人になっている人に限られています。ただし、遺留分を主張することができる特定の相続人であっても、相続欠格となったり、廃除されたり、相続放棄をしたりした場合には、遺留分を請求することができません。
ちなみに、被相続人の兄弟姉妹は、遺留分認められないのか気になる方もいると思いますが、被相続人の兄弟姉妹・甥姪には遺留分が認められません。

遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求には、裁判以外にもいくつかの方法があります。どのような方法を採ることができるかについては、以下のようになります。

1. 交渉

円満な解決を目指すために、いきなり裁判をするというわけではなく、まず当事者間での話し合いによって解決を図る方法があります。
しかし、相続においては、当事者同士の感情的な対立が生じやすく、冷静な話し合いが難しい場合も多くあります。特に、遺産の大部分を譲渡された相続人や受遺者が自らの権利を主張することで、遺留分の支払いに合意しないことも珍しくありません。
そのため、他の相続人や受遺者と遺留分について交渉を行う前に、弁護士に相談をすることで、法律に基づいた客観的な視点から、交渉においての論点を整理し、より交渉を有利にすすめていくことができます。

2. 内容証明郵便による請求

遺留分侵害者との話し合いで合意が得られない場合や交渉の途中であっても、遺留分侵害額請求の消滅時効が迫っている場合などには、正式な請求の意思を示すために、内容証明郵便で遺留分侵害額請求をしておくことが必要になります。
または、相手方と話し合いをする前に、先に内容証明郵便を送付し、遺留分侵害額請求の意思を示すという場合もあります。

遺留分侵害額請求権の消滅時効は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内となっています。また、相続の開始を知らなかったとしても、相続開始の時から10年が経っている場合には、時効(除斥期間)によって消滅します。
なお、遺留分侵害額請求を行った後にも時効があり、金銭支払請求の権利の消滅時効は、意思表示をしたときから5年です。

内容証明郵便は、遺留分を侵害している相手方に対して請求内容や請求の事実を証明するもので、裁判の際にも有効な証拠となります。そのため、請求する意思があることを確実に示すためにも内容証明郵便で送ることが大切です。ただし、内容証明郵便を送るだけで問題が解決するわけではありません。

相手方が請求に応じない場合や、金額について争いが生じた場合には、さらなる手続が必要となります。

内容証明郵便の謄本について

内容証明郵便は、郵便局で依頼します。その場合、受取人へ送付する文書の他に、差出人の側で謄本を2通作成する必要があります。内容証明郵便は細かく書式が決まっています。

もし書式に不備があると、内容証明郵便の配達を受け付けてもらえない可能性があります。書式に問題がないかどうかご自身で判断するのが不安な場合には、相続に詳しい弁護士に作成を依頼することもできます。 また、郵便局に行くことが難しい場合には、郵便局へ行かなくても使える電子内容証明サービスとひな形の利用も検討できます。

内容証明郵便の記載事項などについて

遺留分侵害額請求の内容証明郵便には、以下のような事項を記載します。
※下記内容をすべて記載すれば問題ないというわけではないため、必要に応じて追記する事項があります。

  • 被相続人の名前
  • 遺留分を侵害する遺贈または贈与の時期と内容
  • 遺留分侵害額請求を行う旨

を記載します。
次に、遺留分侵害額請求書の文例を紹介します。

【文例】

遺留分侵害額請求書

〇〇 〇〇 殿 (遺留分侵害をしている相手方の名前)
冠省
被相続人○○の相続につき、以下のとおりご請求申し上げます。 被相続人は、○年○月○日付遺言書において、全財産を貴殿に相続させるものとしております。 しかし、同遺言内容は私の遺留分を侵害していますので、本書面をもって、遺留分侵害額請求を致します。

草々

令和○年○月○日
神奈川県〇〇市○○町○○
〇〇〇〇 印

特に遺留分侵害額請求の時効が迫っている場合には、簡単な内容でも内容証明郵便を送付しておくことが大切です。

3. 家庭裁判所での調停

交渉や内容証明郵便でも相手方との解決が難しい場合には、家庭裁判所に対して遺留分侵害額請求の調停を申し立てることができます。
調停では、家庭裁判所に選任された調停委員が中立の立場で当事者双方の主張を個別に聞きながら当事者間での話し合いを仲介し、双方が合意できる解決策を探ります。そのため、相続人同士が直接話し合いを行う場合よりも、両当事者が歩み寄りやすくなることが期待されます。
当事者が互いに調停案に合意できれば、調停成立となります。

調停は、裁判に比べて柔軟な解決策が得られる可能性があり、費用や時間も抑えられるメリットがあります。しかし、調停でも合意に至らなければ、最終的には裁判に移行することになります。

調停手続の流れ

調停の基本的な流れは下記のようになります。

① 調停の申立て

調停申立ては、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に対して行います。その際には、下記②の必要書類等を提出する必要があります。

② 主張書面・証拠の準備、提出

遺留分侵害があったことに関する主張内容を記載した書面と、主張する事実があったことを示す証拠を提出します。

証拠については、必須ではありませんが、調停期日において効果的に主張を展開し、調停委員に言い分を理解してもらうためには、用意しておくとよいでしょう。
必要書類については、以下のようなものがあります。

  • 申立書およびその写し(相手方の数の通数)
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券写し、債務の額に関する資料など)
  • 収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

この他、被相続人と相続人の関係により、追加で戸籍関連書類が必要な場合があります。連絡用の郵便切手の金額は、家庭裁判所の窓口で確認します。

③ 調停期日

調停期日では、調停委員が当事者双方の言い分を個別に聴取し、調停案への合意を目指します。

1度目の調停期日で話し合いがまとまらない場合は、当事者の意思を確認しながら次回期日を設定するかどうかを決定します。

④ 調停成立もしくは調停不成立

当事者同士が調停案に合意できれば、調停は成立します。しかし、調停案への合意が成立しなければ、調停は不成立となり、訴訟手続を検討することになります。

4.裁判

調停でも話し合いがまとまらない場合には、裁判(遺留分侵害額請求訴訟といいます)によって遺留分侵害額の支払いを求めることになります。

裁判では、遺留分侵害の事実を証拠により立証する必要があり、法的な審理を通じて遺留分が侵害されているかどうかが判断されます。しかし、裁判においてどのような証拠を収集する必要があるのか、どのように訴訟の準備を進めてゆけば良いかなどについては、個人で判断することが難しいことも多いです。

裁判においても、法律を熟知している弁護士に依頼することで、裁判を有利に進めていくことができ、希望する成果を得られる可能性が高まります。裁判で遺留分の侵害が認められれば、相手方に対して遺留分相当額の支払いが命じられます。裁判は、遺留分の問題について確実な解決手段ではありますが、期間も長期間にわたることが多いです。

裁判手続の流れ

訴訟手続きの基本的な流れは、以下のようになります。

① 訴状の提出

訴訟を提起する場合には、裁判所へ訴状を提出します。訴状には、遺留分侵害額請求の内容などを記載します。

訴訟を提起するのに必要となる主な書類は、以下のとおりです。

  • 訴状の正本および副本
  • 証拠書類の写し
  • 収入印紙
  • 郵便料
② 準備書面・証拠の提出

法廷で開催される口頭弁論に備えて、遺留分の侵害が発生した具体的な経緯などを記載した準備書面を作成します。また訴訟で主張する事実を立証するために必要な証拠を集め、裁判所に提出します。

③ 口頭弁論

口頭弁論では、当事者双方が主張・立証を展開します。

④ 和解勧告

訴訟の途中で、裁判所が当事者双方に関して和解を勧告する場合があります。裁判上の和解が成立した場合、確定判決と同一の効力を有する和解調書が作成され、訴訟は終了します。

⑤ 判決

裁判上の和解が成立しないまま、口頭弁論における主張・立証が出尽くしたと判断された場合、裁判所は判決を言い渡します。

⑥ 判決の確定

控訴期間(判決書の送達を受けた日から2週間以内)に適法な控訴が行われなかった場合、判決が確定します。請求を認める判決が確定した後は、強制執行により財産を差し押さえることができるようになります。

遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット

遺留分侵害額請求は、侵害されているご自身で行うこともできます。しかし、ご自分の遺留分がいくらになり、相手方にどれだけ請求できるのかを把握することは、法律に詳しい場合でないと難しいでしょう。 なぜなら、遺留分の計算は、民法に則って正しく計算する必要があります。

さらに、遺留分権利者と遺留分を侵害している者との話し合いで、基礎財産の金額についても争いになりやすく、合意に至ることが難しい場合も多くあります。そのため、最終的に訴訟へ移行するとなると、訴訟準備には専門的な対応が要求され相続に詳しい弁護士以外では、対応が難しいです。

相続に詳しい弁護士に依頼することで、得られるメリットについてまとめました。

1.法的知識に基づいた適切なアドバイス

遺留分侵害額請求には、相続法に関する専門的な知識が必要です。遺産分割や遺留分の計算には、法律上のルールが複雑に絡んでおり、これを個人で正確に理解し、適切に対応することは難しいことが多いです。

相続を取り扱う弁護士は、遺留分に関する法的な知識と経験を活かし、具体的なケースに応じた適切なアドバイスを提供することができます。
たとえば、請求額の計算や交渉戦略、裁判での見通しなど、弁護士のアドバイスによって、より有利な結果を得ることが可能となります。

2.交渉の代理人としての役割

遺留分侵害額請求をご自身で進める場合、当事者同士の感情的な対立が避けられないことがあります。特に、家族や親族間での争いでは、冷静な話し合いが難しくなるケースも多いです。このような場合、弁護士がご依頼人の方の代理人となることで、感情的な要素を排除し、法律に基づいた冷静な交渉が可能となります。

また弁護士は、交渉の場でも法的な権利を主張しつつ、相手方との間で適切な合意を目指します。これにより、ご自身での交渉が難しい場合でも、スムーズな解決が期待できます。

3.調停や裁判での代理

調停や裁判に進展する場合、法的な手続や書類の準備が必要となります。これらの手続を法律に熟知していない人が個人で進めるのは、非常に負担が大きく、誤った対応をしてしまうと、結果的に不利な状況となってしまうこともあります。弁護士に依頼することで、調停や裁判の手続全般を任せることができます。依頼者の方に代わって、全ての手続を進めるため、安心して任せることができます。

4.時効に関する適切な対応

遺留分侵害額請求には、時効が存在します。被相続人の死亡を知った時から1年以内に請求しなければ、請求権が消滅してしまいます。また、相続開始から10年が経過すると、遺留分侵害額請求自体ができなくなります。
弁護士に依頼することで、時効に関する適切なアドバイスを受け、手続を遅らせることなく請求を進めることができます。


弁護士法人シーライトでは、遺留分に関する相続問題を多く解決している弁護士が、遺留分侵害額の計算、内容証明郵便の作成・交渉、調停や訴訟の準備に至るまで、適切な遺留分侵害額請求を行うことができるようにサポートいたします。遺留分侵害額請求をご検討されている場合には、早めに弁護士法人シーライトまでご相談ください。



弁護士 阿部 貴之 写真 弁護士法人シーライト

代表弁護士 阿部 貴之

神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。以来相続トラブルの相談実績は500件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介

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