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遺留分を支払わないとどうなるのか?~確認するべき注意点や支払困難な場合の対処法もあわせて解説します~

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「私は後妻で、亡くなった夫との間に子供はなく、夫が亡くなった後、遺産を全て相続しましたが、亡き前妻と夫との間には子どもが1人おり、その子どもから遺留分侵害額請求を受けてしまいました。けれど、遺産のほとんどは、自宅や不動産など現金以外のもので、お金を支払いたくてもすぐに支払うことができません。請求されている遺留分を支払わないと、どうなるのでしょうか。」
このような状況の場合、どのように対処したらよいのでしょうか。 今回は、遺留分を請求されたらどのように対処したらよいのという点と支払困難な場合の対処法をあわせてご紹介します。

目次

遺留分を請求されたらどうするのか?

被相続人の遺言通りに遺産のほとんどを相続したり、遺贈を受けたり、生前贈与を受けたりした場合に、他の相続人から遺留分侵害額請求をされてしまったら、亡くなられた被相続人の遺志なのだから、請求を受けた側としては不合理に思われるかもしれません。
しかし、民法では、一定の相続人に対して、相続における最低限の取り分である遺留分を認めています。一定の相続人とは、配偶者、直系卑属、直系尊属の中で、相続人になっている人のことを指します。そのため、もしご自身が遺留分の請求をされているにも関わらず、その請求を無視したり、払わなかったりということは原則できません。ですから、もし遺留分の請求をされた場合には、請求者側に対してしっかりと対応し、適切な手続を行う必要があります。

遺留分が請求された場合の流れについて

まず遺留分が請求された場合の流れについて説明します。

1.内容証明郵便が送られる

遺留分の請求は、どのような形で行っても問題ありません。そのため、口頭やメールでなされる場合もありますが、一般的には、請求したという証拠を残すために内容証明郵便で送られていることが多いです。示談交渉は、両者間で話合いをし、問題解決を図る方法になります。もちろん、必ず示談交渉を経なければならないというわけではありません。

遺留分侵害額請求調停の申立て

示談交渉が決裂した場合には、遺留分の請求をしている相手側から調停の申立てがなされます。調停によって、双方が合意に達すれば解決となります。

遺留分侵害額請求訴訟の提起

遺留分の問題に関して、調停で解決しなかった場合には、遺留分請求者は、訴訟を起こしてくることになります。訴訟では、裁判官が遺留分を支払うべきか、証拠などを用いて判断します。

遺留分侵害額請求を無視したら起こること

遺留分の請求を無視したり、支払い拒否をしたりしてしまうと法的なトラブルを引き起こす可能性があります。たとえば、請求している相手側に弁護士がついたり、保全措置(財産の仮差押え)の手続、調停の申立てや裁判を起こしたり、最終的には財産の差押えなどをされるかもしれません。

相続財産の仮差押えをされてしまう

相続財産の仮差押えは、遺留分侵害額請求訴訟を行う前に、遺留分侵害額請求をされている側の財産を仮に差し押さえる保全手続になります。保全措置により、相続した不動産や債権、銀行口座を仮に差し押さえられることになります。

遺留分侵害額請求調停の申立てをされる

遺留分の請求を無視していると、遺留分侵害額の請求調停を申立てられてしまう可能性があります。調停は、家庭裁判所で2名の調停委員が遺留分請求者と請求を受けている人との間に入り、話合いによって解決を目指す手続となります。調停は欠席せず、しっかりと出席し、話合いに応じる姿勢を相手に示すようにしましょう。

遺留分侵害額請求訴訟を提起される

調停で、請求者側と話合いによる合意ができず不成立になってしまった場合や調停への欠席など話合いに応じる姿勢が見せられない場合には、相手側より訴訟を提起される可能性があります。調停では裁判所を介して両者の合意を図る手続ですが、訴訟は当事者の合意によらず、当事者の主張立証を踏まえて裁判官が判決を下します。

財産を差押えられる

調停や裁判所の判決で決まった遺留分の支払いを行わないと、遺留分権利者は裁判所に強制執行の申立てを行い、財産が差し押さえられてしまう可能性があります。差押えの対象となる財産は、たとえば相続した遺産に限らず、ご自身の預貯金、給料、不動産なども対象となります。

遺留分侵害額請求をされたら支払いは現金が原則

遺留分侵害額請求をされた場合、遺留分の支払いは、現金で支払うというのが原則です。なお、現金での支払いは、2019年7月1日以降に発生した相続が対象になりますので注意が必要です。
遺留分侵害額請求は、以前は、遺留分減殺請求と呼ばれていました。2019年7月1日施行の民法改正によって名称が改められて、遺留分侵害額請求と呼ばれています。遺留分減殺請求は、財産そのものを返す現物返還が原則とされていましたが、民法改正後は、現物返還ではなく現金での精算となりました。

相続したものが不動産であっても遺留分侵害額請求をされたら支払いは原則現金で

相続したもののほとんどが不動産の場合でも、遺留分侵害額請求を受けてしまったら、支払いは現金で行うのが原則となります。もし、被相続人から土地や建物を相続し、遺留分侵害額請求された場合には、侵害額に相当する現金を支払わなければなりません。

遺留分侵害額請求をされた場合の確認すべき注意点

遺留分を請求されたら、下記の点に注意しつつ、きちんと対応することが大事です。

1.遺留分権利者であるかどうかの確認

遺留分侵害額請求をされた場合には、請求している相手が、遺留分権利者であるかどうかをしっかり確認しましょう。
相続権がない人は、遺留分を請求する権利を持っていません。そのため、相続権のない人から遺留分を請求された場合には、請求に対して拒否することができます。遺留分が認められる対象者は、配偶者、直系卑属(子ども、子どもが他界している場合には孫など)、直系尊属(被相続人の父母、父母が他界している場合には祖父母など)の中で、相続人になっている人となっています。
法定相続人であっても、相続放棄している相続人や相続欠格、相続廃除されている相続人には請求する権利がありません。また、被相続人の兄弟姉妹、甥や姪にも遺留分は認められていません。

2.遺留分侵害額請求の期限が過ぎていないか

遺留分侵害額請求には、消滅時効と除斥期間という2種類の有効期限があります。

①遺留分侵害額請求権の消滅時効:遺留分権利者が①相続の開始と、②遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から、1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければ、時効によって権利が消滅します。

②遺留分侵害額請求権の除斥期間:遺留分権利者が相続開始を知ってから1年間に当てはまるとしても、相続開始の時から10年が経っている場合には、時効によって権利が消滅します。

③金銭債権の消滅時効:遺留分侵害額請求を行った後、遺留分侵害額請求を行使してから5年間たつと、時効によって金銭支払請求の権利が消滅します。

上記の期限のうちどれかに当てはまる場合、時効を援用すれば相手側は遺留分侵害額請求できる権利を失い、ご自身が遺留分を支払う義務は発生しません。そのため、遺留分侵害額請求をされたら、次のような手順で確認します。

【手順1】相続開始日(被相続人が亡くなった日)、また、相手側が遺留分侵害を知った日時を確認します。

【手順2】次に遺留分請求が時効になっていないか確認するため、遺留分侵害を知った日から1年を過ぎていないか、相続が開始してから10年の期間が過ぎていないか確認します。

上記のことを確認し、遺留分請求が時効になっていないか確認することができます。

3.請求された遺留分の金額は正しいかどうか

遺留分権利者から請求されている金額が正しいものであるか必ず確認しましょう。遺留分額の計算は、遺産の評価額に生前贈与された財産の評価額を加えた額から借金などの債務を引いた額に個別の遺留分割合を掛けて計算します。 相続財産に不動産が含まれている場合の評価、遺贈や特別受益などが含まれている場合には、複雑な計算となります。
また、請求している相手にも生前贈与がないか確認するようにしましょう。遺留分を請求してきた人が、生前贈与で受け取った額を差し引かずに請求してきた場合には、遺留分の支払額を減額できる可能性があります。ご自身で相手側の請求額が正しいものか確認するのが不安な場合や難しい場合には、遺産相続に詳しい弁護士に相談をし、サポートを受けるのも1つの方法となります。

遺留分請求の金額が正しいものであるかを確認するためには、次のようなことに注意しましょう。

遺留分割合に間違いはないかどうかの確認

各相続人の遺留分の割合早見表

 
相続人の構成各相続人の遺留分割合
配偶者子ども父母兄弟
配偶者のみ1/2   
配偶者と子供1/41/4(複数人いる場合は人数で割る)  
配偶者と親1/3 1/6(両親がともに存命の場合は、1人の割合1/12) 
配偶者と兄弟姉妹1/2  なし
子供のみ 1/2(複数人いる場合は人数で割る)  
親のみ  1/3(両親がともに存命の場合は、1人の割合1/6) 
兄弟姉妹のみ   なし

遺産の評価額が適正かどうかの確認

請求者が提示した遺産の評価額が不適切だった場合には、相手側から請求された遺留分の金額を減額できる可能性があります。
たとえば、不動産や非上場株式など評価が難しいものについて、ご自身が受け取った財産を過大評価されて、遺留分を多く請求されている場合もあります。そのため、遺産の評価額が適正なものであるかを調べるためにも、不動産については、不動産鑑定士などの専門家への依頼を要する場合もあります。相続財産の評価額が算出されたら、遺留分の計算をおこないます。遺留分の計算をするうえで、計算方法をしっかりと理解することが大切です。
ご自身で遺留分請求された遺留分の金額が正しいかどうか判断するのが難しい場合には、弁護士に相談することで、適切な金額を算定することができます。

請求者が被相続人から生前贈与を受けているかどうかの確認

もし遺留分を請求してきた人が、生前贈与で受け取った額を差し引かずに請求してきた場合には、請求された遺留分額を減額できる可能性があります。ですから遺留分侵害額請求されたときには、遺留分を請求してきた相手が過去に被相続人から生前贈与を受けていないか調査するようにしましょう。

現金がなく遺留分の支払困難な場合の対処法

遺産に預貯金や保険などがある場合には、遺留分の支払に困ることは少ないですが、不動産や売却困難な事業用資産などが遺産の場合には、遺留分の支払いが難しいこともあるかと思います。そのような場合には、支払期限を延ばすことができる「期限の許与」の請求を裁判所にできるようになっています。この期限の許与を裁判所に求めるためには、訴訟を提起することが求められます。
すでに相手が訴訟を提起している場合は、その裁判の中で裁判官に支払い期限の許与を認めてもらうよう訴えることになります。支払期限の許与が認められるかどうか、また全額許与が認められるか、一部の金額のみ認められるかは、事案の内容と裁判官の判断によって異なります。
もし、期限の許与が認められた場合には、指定された期日まで遺留分の支払いが猶予されますので、その間に不動産を売却するなどして、遺留分権利者に支払う現金の準備を進めることになります。また、遺留分の金額を一括で支払えない場合、請求者との話し合いによって分割払いにしてもらうことも考えられます。
このように相手との合意を得て、遺留分の支払い返済計画を立てご自身の負担を軽くする方法を見つけることができます。ただし、支払いができない理由や現在の状況によって対応方法が異なるため、相続に詳しい弁護士に相談しならが進めていくと、よりスムーズな話合いとなります。

遺留分侵害額請求を受けてしまったら弁護士にご相談ください

遺留分を請求されてしまった場合には、法律上の要件を満たす限り、支払いを拒否することはできません。もし、遺留分の請求を無視したり、支払いを拒否したりすれば、相手側から調停や訴訟を起こされる可能性もあります。そうなってしまうと、余計にご自身の労力や時間もかかることになります。支払い請求を受けたけれど、請求額が正しいかどうか判断が個人では難しい場合や、すぐの支払いが難しい場合などは、弁護士にご相談ください。
弁護士にご依頼いただければ、遺留分額が妥当かどうかを検討するにあたっての生前贈与の有無の確認や遺産の適正な評価額の算出、その他調停や裁判に必要な事務手続などを依頼者様に代わって行います。遺留分侵害額請求の減額につなげるためには、相続に詳しい弁護士へ依頼することをおすすめします。遺留分問題は複雑な場合が多く、ご自身での解決を図るのは難しいこともあります。弁護士法人シーライトでは、遺留分に関する問題についても受け付けております。お気軽にご相談ください。



弁護士 阿部 貴之 写真 弁護士法人シーライト

代表弁護士 阿部 貴之

神奈川県弁護士会所属。弁護士登録後、都内総合法律事務所、東京都庁労働局等を経て、平成27年に弁護士法人シーライトを開設。以来相続トラブルの相談実績は400件を超える。「依頼者の良き伴走者となるために」をモットーに、スタッフと共に事件解決へ向かって邁進中。好きな言葉は「二人三脚」「誠心誠意」。弁護士紹介

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