遺産相続のなかで、公正証書遺言によって特定の相続人が遺産の大部分を受け取るように指定されていた場合には、他の相続人に認められている遺留分を侵害する部分に関して遺留分侵害額請求をすることができます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人が2人以上の証人の立会いのもと、遺言者から聞いた内容を文章にまとめ、公正証書として作成する遺言です。 法律の専門家である公証人が遺言を作成しますので、遺言が形式の不備で無効になるリスクは低く、もっとも確実な遺言方法です。
また、公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されているので、遺言書の紛失や隠匿、偽造や改ざんの心配もありません。
そして、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がなく、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。 しかし、証人の適格性や遺言者の遺言能力を審査することはないので、これらが原因となって無効になるおそれがある点に注意が必要です。
遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求とは、被相続人が遺留分を侵害するような遺贈や贈与をした場合に、財産をもらった者に対して自己の遺留分に相当する金銭の支払いを請求する制度のことをいいます。
遺留分とは、たとえ遺言があった場合でも優先される最低限の遺産の取り分となります。また、遺留分減殺請求は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。民法改正後の遺留分侵害額請求では、金銭での支払いを請求することができます。なお、被相続人の死亡が令和元年7月1日より前である場合、遺留分減殺請求権の行使となります。
公正証書遺言で作成された遺言書が残されていた場合、法的に有効な公正証書遺言があると遺留分は請求できないかもしれないと考える方がいるかもしれません。 しかし、そんなことはありません。
たとえ公正証書遺言で作成された遺言であっても、遺留分侵害額請求はできます。なぜならば、遺留分を請求する権利は、遺言よりも優先されるからです。 なお、遺留分侵害額請求をされたからといって公正証書遺言自体が無効になるわけではありません。 遺言に沿って財産を取得したうえで、財産を取得した人が、遺留分侵害額請求をした人に金銭を支払う形になります。
公正証書遺言によって遺留分が侵害されるケースとは?
公正証書遺言によって遺留分が侵害されるケースとしては、このような場合があります。
- 公正証書遺言のなかで、特定の人物だけにすべての遺産を相続させる旨が記載されていた場合
- 公正証書遺言のなかで、被相続人と関係がよくなかった相続人の相続分がゼロとなっていた場合
- 配偶者や子どもがいるにもかかわらず、遺産のほとんどを愛人に相続させる旨が記載されていた場合
上記のようなケースで、侵害されている遺留分を取り戻すには、遺留分侵害額請求を行わなければなりません。
遺留分侵害額請求は権利があるだけなので、必ず「遺留分侵害額請求」を行使しなければならないわけではありません。しかし、遺留分侵害額請求ができる期間には限りがあります。
遺留分権利者が、①相続の開始と、②遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から、1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければ、それ以後の遺留分侵害額請求はできません。
また、相続開始の時から10年が経っている場合には、時効によって消滅します。 さらに、遺留分侵害額請求を行った後にも、時効があります。遺留分侵害額請求を行使してから5年間経つと、金銭支払請求の権利が消滅します。 このように、1年、5年、10年と時効が存在しますのでご注意ください。
遺留分侵害額請求の方法について
手続き方法は、通常の遺留分侵害額請求と同じです。
遺留分侵害額請求に関するご相談は弁護士に
今回は、公正証書遺言と遺留分の関係、侵害されている遺留分を請求する方法についてご説明しました。
遺留分の問題は、どうしても長期化しやすい問題となってしまいます。 もし公正証書遺言によって遺留分を侵害されている場合には、早めに遺留分侵害額請求を行うことをおすすめします。なぜなら、遺留分には「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年間」という時効があります。もし遺留分侵害額請求をしようかどうか迷っている場合には、一度弁護士に相談してみることで、的確なアドバイスのもと、考えを整理することもできるかと思います。
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