不動産の評価額を争い、当初提案から400万円以上増額した事例

50代 男性 神奈川県

相続人ご依頼者およびきょうだい2人
被相続人との関係
相続財産不動産
遺言の有無
主な問題点不動産の評価
相手に専門家(弁護士など)がついた
相続人と疎遠、仲がよくない
話し合いが進まない
手続き訴訟
目次

背景

ご依頼者は、きょうだいと共有していた不動産について、相手方らから共有物分割請求訴訟を提起され、どのように対応すべきか分からないということで、当事務所へご相談にいらっしゃいました。

ご依頼者らは、被相続人が亡くなった後、遺産分割協議により、不動産をきょうだい3人がそれぞれ3分の1ずつ取得する共有名義としていました。
その後、相手方らから、ご依頼者の共有持分を買い取りたいとの意向が示されました。しかし、ご依頼者は、遺産分割の内容や、その後の相手方らの対応に納得できない部分があり、話し合いが進まない状態が続いていました。そのような中、相手方らから共有物分割請求訴訟を提起されました。

ご相談を受けて事情を確認したところ、相手方らが提示していた買取金額と、ご依頼者が相当と考える金額との間には大きな差があり、不動産の評価方法について検討、交渉する余地があると判断したことから、ご依頼をお受けしました。

主張

  • 不動産を適切に評価したうえで、その評価額に応じた金額で共有持分を相手方らへ譲渡したい。

解決までのながれ

ご相談いただいた時点で、第1回口頭弁論期日が2日後に迫っていました。そこで、まずは答弁書の提出や裁判所への連絡など、直ちに必要となる対応についてご説明し、ご依頼者に早急に対応していただきました。その後、正式に委任契約を締結し、当事務所が訴訟対応を引き継ぎました。

ご依頼者は、遺産分割協議の内容や、その後の相手方の対応についても、納得できない点を裁判の中で主張したいと考えていました。

しかし、それらの事情をすべて訴訟上の争点とすると、争点が広がり、解決までに時間を要する可能性がありました。そこで弁護士は、各主張の法的な位置付けや、訴訟の見通しをご依頼者に説明し、本件では不動産の評価額に争点を絞って主張する方針をご提案しました。ご依頼者にもこの方針をご理解いただき、不動産の評価額を中心として、裁判所に主張を行いました。

相手方らが当初提示した金額は、不動産全体を不動産業者へ売却する場合の買取価格を前提としていました。
しかし、不動産業者が自ら不動産を買い取る場合には、その後の転売に必要となる費用や利益等を考慮して買取価格を設定するため、一般の購入希望者を対象として市場で売却する場合の価格よりも低い金額となることがあります。

本件では、相手方らがご依頼者の共有持分を取得することにより、不動産全体を処分できる状態になることなどを踏まえ、不動産業者による買取価格ではなく、一般の購入希望者を対象として市場で売却する場合の想定価格を基礎として、ご依頼者の持分価格を算定すべきであると主張しました。
また、不動産業者による査定資料等を提出し、不動産の具体的な状況を踏まえた評価額を示したうえで、相手方らとの交渉を行いました。

その結果、当方の主張に近い不動産評価額を前提として、ご依頼者の共有持分を相手方らへ譲渡する内容で、裁判上の和解が成立しました。

結果

不動産の評価方法を見直した結果、当初相手方らから提示されていた金額よりも、400万円以上増額した金額で合意することができました。
受任から約4か月で、裁判上の和解が成立し、共有関係を解消することができました。

担当弁護士の所感

相続した不動産を複数の相続人の共有名義にした場合、その時点では公平な分け方に見えても、その後、不動産を売却したい、誰か一人が取得したい、共有持分を現金化したいといった場面で、共有者間の意見が一致せず、紛争となることがあります。

共有物分割請求訴訟では、不動産を物理的に分ける方法一部の共有者が不動産を取得して他の共有者へ持分相当額を支払う方法不動産を競売して代金を分配する方法などが検討されます。

一部の共有者が不動産を取得し、他の共有者が持分に相当する金銭を受け取る価格賠償の方法では、その金額を算定する前提として、不動産をどのように評価するかが重要になります。不動産の評価額が異なれば、持分を手放す共有者が受け取る金額も大きく変わるためです。
また、同じ不動産であっても、不動産業者に直接買い取ってもらう場合の価格と、一般の購入希望者を対象として市場で売却する場合の想定価格とが一致するとは限りません。

不動産業者による買い取りでは、買い取った不動産を再び売却するために必要となる費用や利益等を考慮して、買取価格が設定されることがあります。そのため、不動産業者が提示した買取価格を、共有物分割における不動産の評価額としてそのまま用いることが妥当とは限りません。
相手方から提示された評価額をそのまま受け入れるのではなく、その金額がどのような売却方法や査定条件を前提として算定されたものなのかを確認することが重要です。

また、共有物分割請求訴訟では、これまでの親族間の経緯や相手方への不満など、さまざまな事情を主張したいと考えることがあります。もちろん、紛争に至った経緯を確認することは重要です。
一方で、これらの事情が共有物の分割方法や持分価格の判断に直接影響するとは限りません。解決を目指すためには、法的に意味のある争点を整理し、どの点について重点的に資料を提出し、主張すべきかを見極める必要があります。

本件では、不動産の評価額に争点を絞り、不動産業者の査定資料等を踏まえて具体的な金額を主張したことが、増額と早期の解決につながりました。

また、本件のような紛争を避けるためには、遺産分割の段階で、不動産を安易に複数の相続人の共有名義とするのではなく、将来の利用方法や売却の可能性、固定資産税や修繕費の負担、共有関係を解消する方法まで考慮して、分割方法を検討することも重要です。

「相続した不動産を共有名義にしたが、その後の売却について話し合いが進まない」「他の共有者から持分の買取りを提案されたものの、提示された金額が妥当か分からない」「共有物分割請求訴訟を提起され、対応方法が分からない」とお悩みの方は、提示された金額や条件を受け入れる前に、一度弁護士へご相談ください。

この案件の担当弁護士

弁護士法人シーライト

弁護士 塩谷 恭平

ご相談をしていただいた方の抱えるご不安に誠実に向き合い、できるだけ専門用語を使わずに丁寧に説明を行って、弁護士がどのようなことをサポートできるのかを明確にすることを常に心がけています。

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