第三者から死因贈与を主張されたものの、相続財産の⼤部分を確保した事例

80代 女性 神奈川県

被相続人妹
被相続人との関係兄弟姉妹
相続財産預貯⾦、不動産、有価証券
遺言の有無無し
手続き訴訟
目次

背景

ご依頼者は、妹が亡くなった後、妹の相続⼈として当事務所に相続⼈及び相続財産の調査をご依頼いただきました。調査終了後、ご依頼者⾃⾝で相続財産の承継⼿続を進めていました。

被相続⼈は、⽣前、第三者である相⼿⽅に財産を取得させる内容の公正証書遺⾔を作成しようとしていましたが、公正証書遺⾔が完成しないまま亡くなりました。
ところが、ご依頼者が相続⼿続を進めている途中で、相⼿⽅から、被相続⼈との間で、被相続⼈が亡くなったら財産を与えるという死因贈与契約が成⽴していたとして、相続財産の引渡しを求められました。

相⼿⽅には代理⼈弁護⼠が就いており、ご依頼者にとっては、遺⾔書が完成していないにもかかわらず、死因贈与契約という聞き慣れない契約を根拠として、突然、財産を請求された状況でした。ご依頼者は、相⼿⽅の請求にどのように対応すべきか不安を感じ、改めて当事務所へご相談にいらっしゃいました。

主張

  • 相⼿⽅が主張する死因贈与契約について法的な検討を⾏い、相続財産をできる限り確保したい。

解決までのながれ

死因贈与契約とは、「⾃分が亡くなったら財産を渡す」という約束を、財産を与える⼈と受け取る⼈との合意によって成⽴させる契約です。財産を与える⼈が1⼈で内容を決めて作成する遺⾔とは異なり、死因贈与契約が成⽴するためには、当事者間の合意が必要になります。

当事務所は、相⼿⽅の主張内容及びその法的根拠を検討しました。その結果、死因贈与契約が成⽴していたのか、相⼿⽅が根拠としていた資料が書⾯による死因贈与を⽰すものといえるのか、ご依頼者による死因贈与契約の解除が認められるのかという複数の問題があると判断し、段階的に主張を組み⽴てました。

第1段階:死因贈与契約が成⽴していたのか

死因贈与は契約であるため、被相続⼈が相⼿⽅に財産を与えたいという意思を有していただけでなく、被相続⼈と相⼿⽅との間で、対象となる財産や贈与の内容について合意が成⽴していたことが必要です。

公正証書遺⾔を作成しようとしていた事実は、被相続⼈が相⼿⽅に財産を取得させる意思を有していたことをうかがわせる事情ではあります。しかし、そのことから直ちに、被相続⼈と相⼿⽅との間で死因贈与契約が成⽴していたことになるわけではありません。

そこで当事務所は、相⼿⽅の主張内容及び提出された資料を検討し、相⼿⽅が主張する死因贈与契約について、当事者間の合意が成⽴していたといえるのか疑問があると主張しました。

交渉段階では、死因贈与契約の成⽴を争いつつ、早期に紛争を解決するため、相続財産のうち⼀部の不動産を相⼿⽅に取得させるという解決案を提⽰しました。しかし、相⼿⽅との間で合意には⾄らず、相⼿⽅から死因贈与契約の有効性を確認するための訴訟を提起されました。

第2段階:書⾯による死因贈与といえるのか

訴訟では、仮に死因贈与契約が成⽴していたとしても、その契約が書⾯による贈与といえるのかが問題となりました。

相⼿⽅は、被相続⼈が作成しようとしていた公正証書遺⾔の案や司法書⼠が作成したメモが存在することを理由として、死因贈与契約は書⾯によるものであり、ご依頼者が解除することはできないと主張しました。しかし、これらの資料は、被相続⼈本⼈が⽣前に内容を確認したものではありませんでした。

そこで当事務所は、被相続⼈本⼈が確認していない資料をもって、被相続⼈の意思が書⾯に⽰されたとはいえず、書⾯による死因贈与が成⽴したとは認められないと主張しました。

第3段階:ご依頼者による解除が認められるのか

さらに、仮に書⾯によらない死因贈与契約が成⽴していたとしても、ご依頼者による契約の解除が認められると主張しました。
これに対し、相⼿⽅からは、ご依頼者による解除は認められないとの主張がありました。当事務所は、本件の経緯や証拠関係を整理し、ご依頼者による解除権の⾏使が信義則に反するものではないと主張しました。

このように、当事務所は、死因贈与契約が成⽴しているのか、書⾯による死因贈与といえるのか、ご依頼者による解除が認められるのかという順に争点を整理しました。

1つの主張だけに頼るのではなく、仮に前の段階の主張が認められなかった場合にも、次の段階の主張によって相⼿⽅の請求に対応できるよう、複数の法的な主張を⾏いました。

その結果、裁判所からは死因贈与契約⾃体は成⽴しているものの、相⼿⽅が死因贈与の根拠としていた資料については、被相続⼈本⼈が⽣前に確認したものではないため、書⾯による死因贈与との相⼿⽅の主張が認められるかには疑問があるとの⾒解が⽰されました。また、現時点の証拠関係では、ご依頼者による解除権の⾏使が信義則に反するといえるほどの事情は認められないとの⾒解も⽰されました。

そのうえで、裁判所から、当事務所が交渉段階で提⽰していた相続財産のうち、⼀部の不動産を相⼿⽅に取得させるという解決案を基礎として、これにご依頼者が相⼿⽅へ⼀定の解決⾦を⽀払う内容を加えた和解案が⽰されました。

結果

最終的には、裁判所から⽰された和解案を踏まえ、相⼿⽅が相続財産のうち⼀部の不動産を取得し、ご依頼者が⼀定の解決⾦を⽀払う⼀⽅、ご依頼者がその他の相続財産を確保する内容で、裁判上の和解が成⽴しました。

この和解は、当事務所が交渉段階で提⽰していた⼀部の不動産を相⼿⽅に取得させるという解決案を基本的な枠組みとするものでした。

相⼿⽅が主張した死因贈与契約の内容に従って相続財産を引き渡すのではなく、ご依頼者による契約の解除を前提として、判決に⾄る前に紛争を終結させることができました。

担当弁護士の所感

相続⼿続を進めている途中で、親族ではない第三者から「被相続⼈から財産をもらう約束をしていた」と突然主張されることがあります。

相⼿⽅に代理⼈弁護⼠が就いている場合や、契約の根拠とされる資料を⽰された場合には、相⼿⽅の主張が法的に正しく、請求された財産を渡さなければならないと考えてしまう⽅もいらっしゃるかもしれません。
しかし、相⼿⽅が死因贈与契約の存在を主張しているからといって、その主張どおりの契約が当然に有効となり、請求された財産をすべて引き渡さなければならないとは限りません。

死因贈与をめぐる紛争では、被相続⼈と相⼿⽅との間で合意が成⽴していたのかだけでなく、相⼿⽅が根拠としている資料が書⾯による贈与を⽰すものといえるのか、契約の解除が認められるのか、解除権の⾏使が信義則に反しないかなど、複数の法的な問題を検討する必要があります。

特に、契約の根拠とされる資料が存在する場合でも、資料の名称や形式だけで判断することはできません。誰がどのような経緯で作成したのか、被相続⼈本⼈が内容を確認していたのかなどを検討することが重要です。
また、相⼿⽅の請求に対して法的な反論を⾏うだけでなく、訴訟の⾒通しや判決に⾄った場合の負担も踏まえ、どのような条件であれば現実的な解決が可能かを早い段階から検討することも⼤切です。本件では、当事務所が交渉段階で提⽰していた解決案が裁判所の和解案の基礎となりました。

「相続開始後に、第三者から財産をもらう約束があったと主張された」「死因贈与契約を理由として不動産や預貯⾦の引渡しを求められた」「相⼿⽅の弁護⼠から書⾯が届いたが、請求に応じるべきか分からない」とお悩みの⽅は、相⼿⽅の請求を受け⼊れる前に、ぜひ弁護⼠法⼈シーライトへご相談ください。

この案件の担当弁護士

弁護士法人シーライト

弁護士 塩谷 恭平

ご相談をしていただいた方の抱えるご不安に誠実に向き合い、できるだけ専門用語を使わずに丁寧に説明を行って、弁護士がどのようなことをサポートできるのかを明確にすることを常に心がけています。

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