生前の預金管理が争点となった遺産分割を解決した事例

50代 女性 神奈川県

相続人長女、次女
被相続人
被相続人との関係
相続財産預貯金
遺言の有無なし(エンディングノート有)
主な問題点預貯金の使い込み、遺産分割
手続き協議
目次

背景

ご依頼者のお母様が亡くなられ、相続が発生しました。相続人はご依頼者(長女)と相手方(次女)のおふたりです。

ご相談に来られたのは、相続発生から約1か月半後と比較的早い時期でした。遺産は主に預貯金でしたが、お母様の生前の面倒を見ていた次女が、多額の預金を出金して管理していることが判明しました。しかし、次女からこの点に関する十分な説明がなかったこともあり、ご依頼者としては不信感を抱かれていました。

また、お母様が生前に作成されたエンディングノートがあり、そこには法定相続分とは異なり、次女に多くの財産を分けたいという趣旨の記載がありました。相手方は、このエンディングノートの内容に沿った遺産分割を希望していました。

ご依頼者としても、お母様の意思はできる限り尊重したいというお気持ちはありましたが、一方で、預金管理等に関する説明が十分になされないまま遺産分割協議を進めることには強い不安を感じておられました。
そこで、感情的な対立をできるだけ避けながら、法的にも適切な形で遺産分割を進めたいとの思いから、当事務所にご相談・ご依頼をいただきました。

主張

  • 遺産分割を法的に適切な形で進めたい。

解決までのながれ

ご依頼後、まずは遺産調査に着手しました。特に、次女が出金していた預金について、お母様の生活費や医療費等として適切に使用された金額と、現在も次女が管理していると考えられる金額の整理・確認を行いました。

調査の結果、次女が管理している金額を一定程度特定することができたため、その金額と残存する預貯金を合わせて遺産総額として整理し、法定相続分を前提とした遺産分割案を相手方代理人へ提案しました。

これに対し、相手方代理人からは、エンディングノートの内容に沿った分割を行うべきであるとの主張がなされました。エンディングノート自体は、法律上有効な自筆証書遺言の要件を満たしておらず、その記載内容も明確ではない部分がありました。しかし、作成経緯等によっては「死因贈与契約」が成立していると評価される可能性がありました。

仮に死因贈与契約が有効と認められた場合には、その対象財産は相続開始と同時に受贈者(本件では次女)のものとなり、遺産分割の対象外となる可能性があります。

当事務所としては、ご依頼者の意思を確認し、死因贈与契約の成立について慎重に検討するとともに、相続税の申告期限が迫っていたことや、ご依頼者のお気持ちにも配慮し、感情的な対立を深めることなく早期解決を図ることが重要であると判断しました。

そこで、単に法的な主張をぶつけ合うだけでなく、ご依頼者が納得できる解決水準を丁寧に確認しながら、相手方との交渉を継続しました。

結果

相続税の申告期限に間に合う形で遺産分割協議が成立しました。最終的には、エンディングノートの内容よりもご依頼者の取得分が増える内容で合意に至り、相手方から代償金の支払いを受ける形で解決することができました。
その結果、期限内に相続税申告手続を完了させることができました。

担当弁護士の所感

本件では、エンディングノートの法的位置づけと、生前の預貯金の出金・管理の扱いが大きな争点となりました。

被相続人が作成したエンディングノートがあっても、自筆証書遺言の要件を満たしていない場合には、法的効力を有する「遺言書」とは認められません。しかし、記載内容や作成経緯によっては、今回のように「死因贈与契約」が成立しているかが問題となる場合があります。

また、ご家族の介護や生活支援をしていた相続人が、被相続人名義の預貯金を管理しているケースは少なくありません。その中で「どこまでが被相続人のための支出だったのか」「現在どの程度の金額が残っているのか」等が問題となり、相続人間の感情的な対立に繋がることもあります。

本件では、法的な主張だけでなく、ご依頼者のお気持ちに寄り添いつつ、相続税申告期限等も踏まえながら、早期かつ現実的な解決を目指して交渉を進めました。その結果、ご依頼者にも一定程度ご納得いただける形で、円満に解決することができました。

相続では、「法律上どうなるか」だけでなく、「ご家族としてどう受け止めるか」が非常に重要になる場面もあります。

エンディングノートや生前の預金管理をめぐって、親族間で意見が対立してしまうケースは少なくありません。ご自身だけで抱え込まず、一度弁護士へご相談いただくことをお勧めいたします。

この案件の担当弁護士

弁護士法人シーライト

弁護士 塩谷 恭平

ご相談をしていただいた方の抱えるご不安に誠実に向き合い、できるだけ専門用語を使わずに丁寧に説明を行って、弁護士がどのようなことをサポートできるのかを明確にすることを常に心がけています。

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