相続が発生した際に、被相続人の財産の中に株式が含まれている場合、その手続は預貯金や現金などとは異なり、少し複雑になることがあります。特に、有効な遺言書がない場合には、相続人の間で相続財産に関する遺産分割の話し合いが必要になったり、株式について証券会社や金融機関とのやり取りが必要になったりするため、慎重に進めていく必要があります。
日本でも、2014年以降NISA(少額投資非課税制度)がスタートし、また2019年には新型コロナウイルスの影響もあり、投資への意識が高まっています。その結果、投資人口がここ10年間連続で増え続けています。資産の中に株式が含まれることが珍しくなくなってきている昨今、株式が相続財産に含まれていた場合、相続手続に困ることがないように、基本的な流れは知っておくと良いかと思います。そこで今回は、相続財産に株式が含まれていた場合の基本的な手続の流れと、弁護士に依頼するメリットについてご紹介します。
株式の相続手続の基本的な流れ
株式の相続手続は、以下の流れで進めていきます。
①遺言の有無を確認し、相続人の確定
相続が発生したら、まずは遺言の有無を確認します。
被相続人が遺言書を残している場合は、その遺言書が有効な場合、原則として遺言書の記載どおりに株式の相続手続を進めることになります。遺言がない場合は、法律に従い、法定相続人が決まります。
相続人の確定のために、法定相続人が誰なのかを調査する必要がある場合には、相続人調査をします。調査には、被相続人の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を出生から死亡まですべて取得する必要があります。相続人調査が重要なのは、相続人調査・戸籍調査を怠ったために、のちのち相続人の存在が発覚し、遺産分割協議をやり直すことになるなど、時間が余計にかかったりしてしまう可能性があるためです。
②相続財産調査による株式の有無の確認をする
被相続人が株式を保有していたと思われる場合には、その有無と内容を調査します。株式には、上場株式・非上場株式の2種類があり、調査方法がそれぞれ異なります。上場株式とは、東京証券取引所などの株式市場で売買されているものになります。非上場株式とは、証券取引所には公開されておらず、一般に流通していない株式となります。
上場株式の調査方法について
上場株式は、証券会社や信託銀行で管理していることが多いです。そのため、まずは証券会社や信託銀行などから送付される取引残高報告書または評価証明書を確認します。それらの書類から被相続人が保有していた銘柄や株数を確認することができます。
もし、取引残高報告書等の書類を見つけることができない場合には、口座を開設している証券会社等に、被相続人が亡くなり、相続が発生したため、相続発生時の株価を確認したい旨を伝え、取引残高証明書の発行を依頼することになります。しかし、被相続人が株式を持っていることが分かっていても、どの証券会社で取引をしていたのかという詳細が分からない場合には、証券保管振替機構(通称:ほふり)に登録済加入者情報の開示請求を行います。
証券保管振替機構とは、とは、日本国内の証券の電子管理を行う機関です。個人の証券取引の記録を一元管理しており、相続時にどの証券会社に口座があるかを確認できます。開示請求書に必要事項を記入して、必要書類とともに郵送すれば、取引情報が記載された資料を郵送してもらえるので、どこの証券会社で口座を開設していたかが分かります。
開示請求ができる人は、法定相続人、法定相続人の法定代理人・任意代理人、遺言執行者になります。また、開示請求の際には、下記の書類が最低限必要となります。
- 開示請求書
- 法定相続人の本人確認書類
- 相続人の戸籍謄本
- 被相続人の戸籍謄本等(原則として被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類が必要です。)
- 被相続人の住所がわかる資料
非上場株式の調査方法について
非上場株式は、証券会社経由で取引するものではないため、被相続人が管理している株券や株主総会招集通知、配当金の支払通知書、確定申告書の控えなどから保有していた事実を調査します。ただし、非上場株式の場合、2004年の商法改正によって株券不発行が原則となっているため、商法改正後の場合には、株券がないこともあります。発行会社や株主名簿管理人に問い合わせて詳細を確認しましょう。
株券は、貸金庫に保管されているケースもあるので、被相続人が取引していた銀行にも紹介してもらいましょう。調査したのち、株式発行会社が判明したら、直接発行会社に残高証明書を請求します。
③ー1.遺産分割協議(必要な場合)
相続人が1人であれば、その相続人が被相続人の株式を含めた遺産を相続するだけになります。しかし、相続人が複数いる場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの株式を相続するのかを決める必要があります。遺産分割協議が決着するまでの間、株式は相続人全員の共有状態になるため、株式の譲渡など勝手な処分は認められません。
株式の遺産分割方法には、以下の3種類があります。
1. 株式をそのまま相続する(現物分割)
現物分割とは、株式を売却せずに、ある相続人がそのまま相続する方法です。1人の相続人が株式全部を取得する場合だけでなく、複数の銘柄を複数の相続人で分ける場合も現物分割です。たとえば、相続人が子ども2人の場合、子供のうち1人が株式を相続して名義変更をする場合や、被相続人が1500株を所有していた場合には、1人750株ずつ分ける方法もあります。また、被相続人が2種類の株式を持っていた場合であれば、2人でそれぞれの株を相続することも可能です。
2. 株式を売却して、代金を相続人で分ける(換価分割)
2つ目は、株式を売却して売却代金を相続人同士で分配する換価分割です。まずは、相続人の中から代表者を決定し、その代表者の一人が株式を相続します。相続の手続の中で、株式を売却し、得られた現金を分けることになります。売却代金の配分については、法定相続分に従うか、相続人全員の話し合いによって同意があれば、別の方法で決めても構いません。
3. 1人の相続人が株式を相続し、他の相続人に代償金を支払う(代償分割)
3つ目は、1人の相続人が株式を相続して、他の相続人に代償金を支払う代償分割という方法です。代償金の金額については、法定相続分に応じて決めることが一般的です。もちろん、相続人同士の話し合いで代償金の金額を決めることも可能です。たとえば、評価額1,500万円の株式を子ども2人のうち、1人が全部を取得する場合、もう1人の兄弟に750万円の現金を支払います。
以上のように3つの方法が株式の分割にはありますが、株式の価値が高額な場合や、複数の証券口座に分散されている場合は、その分割方法についての話し合いが難航することもあります。さらに、上場株式の評価額は取引残高証明などで容易に把握できますが、非上場株式の評価額は自分で計算しなくてはなりません。評価方法も会社規模や保有株式数で変わるため、相続に詳しい弁護士や税理士などの専門家に相談することを推奨します。
株式を含む相続財産の分け方が決定したら、遺産分割協議を成立させ、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と押印をします。
③ー2.遺産分割協議が成立しなかった場合
株式を含め遺産の分割をめぐっては、相続人同士が対立してしまうケースもあります。しかし、被相続人名義の株式をいつまでも放置するわけにはいきません。もし、遺産分割協議が成立しなかった場合には、家庭裁判所への調停申し立てを検討します。しかし、遺産分割調停でも話合いが成立しない場合には、遺産分割審判へ移行します。審判では、誰が何を相続するかを裁判官が決定することになります。ただし、審判に不服がある場合には、即時抗告も可能であり、その場合は、高等裁判所で審議されます。
④証券会社・信託銀行での名義変更手続
遺産分割協議がまとまった場合は、被相続人の株式を相続人の名義に変更する手続を行います。上場株式の場合は、株式の相続人が証券会社や信託銀行へ連絡して手続をします。非上場株式の場合は、発行会社と直接やりとりをして名義を変更します。
上場株式 ―証券会社等の証券口座にある株式の場合-
まずは、被相続人の口座がある証券会社へ連絡をし、名義変更の手続方法を確認します。証券会社から名義変更に必要な資料が送付されますので、案内に従って必要な書類を揃えます。株式の名義書換に必要な書類は、証券会社によって違いはありますが、証券会社等の所定の請求書類のほかに、一般的な必要書類の例をご紹介します。詳細は証券会社や発行会社などに確認が必要です。
株式の相続に必要な書類
- 開示請求書
- 株券(株券が発行されていない場合は不要)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 遺産分割協議書または相続人全員が署名押印した共同相続人同意書
また、株式を相続するためには、相続人名義の証券口座も必要になります。証券口座の名義変更はできないため、被相続人の証券口座から相続人の証券口座に株式が移管する形になるため、相続人が本人名義の証券口座を有していない場合は、事前に口座を開設する必要があります。
上場株式 -信託銀行等の特別口座にある株式の場合-
信託銀行等の所定の請求書類のほかに必要な書類は、証券口座にある株式の場合と同様になりますが、被相続人の死亡日によって、名義変更に必要な書類が異なります。
被相続人の死亡日 | 必要書類 |
---|---|
被相続人の死亡した日が2009年(平成21年)1月4日以前の場合 ※2009年1月5日以降に上場した会社の株式についての相続手続では、上場日の前日までに亡くなられた場合 | ・相続手続依頼書(兼同意書) ・特別口座開設請求書(または失念救済請求書) ・口座振替申請書 [特別口座] ※相続人の名義で特別口座を開設し、被相続人名義の特別口座から株式を振替える手続が必要(特別口座開設請求) |
被相続人の死亡した日が2009年(平成21年)1月5日以降の場合 ※2009年1月5日以降に上場した会社の株式についての相続手続では、上場日以降に亡くなられた場合 | 相続手続依頼書(兼同意書) ・口座振替申請書 [特別口座] ※手続にあたり、相続人名義で開設された証券口座が必要 |
詳しくは、信託銀行に問い合わせ必要書類を確認する必要があります。
非上場株式の場合
非上場株式の場合は、会社ごとに手続が異なるため会社へ直接問い合わせる必要がありますが、おおむね、以下のような書類が一般的に必要となります。
- 株式名義書換請求書
- 株券(発行されている場合)
- 被相続人と相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書
⑤相続税の申告と納付
株式を含め相続した全財産の総額(課税価格)が相続税の基礎控除額を超えている場合には、相続税の申告と納付をしなければなりません。
相続税の基礎控除額の計算
基本式:3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)
【例】相続人が3人の場合
3,000万円+(600万円 × 3)=4,800万円
相続税が課税される場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告・納付を完了しなければなりません。そのため、遺産分割協議の話し合いがまとまらず、相続税申告が間に合わない場合には、ひとまず法定相続分どおりに分割したとみなす未分割申告も可能です。未分割申告とは、遺産分割が完了していない状態でも、相続税の申告を行う方法です。後から正式に分割が決まった場合は修正申告を行うことになります。
以上が、株式の相続手続の基本的な流れとなります。
株式の評価方法
遺産の分配を公平かつ適正に行うためには、相続開始時点で株式にどのくらいの価値があるのかを評価する必要があります。株式は、毎日価値が変動するので、時価を確認する必要があります。また、上場株式と非上場株式の場合では、評価方法がそれぞれ異なります。上場株式と非上場株式の評価方法には、どのような方法があるのかご説明します。
上場株式の場合
相続の際に使われる株式の価値のひとつである相続税評価額の評価方法をご紹介します。上場株式は、取引相場が明らかなので、評価方法としては以下の4つの価額のうちもっとも低い金額を選ぶことができます。
評価方法 |
---|
相続発生日の終値 |
相続があった月の毎日の終値の平均額 |
相続があった月の前月の終値の平均額 |
相続があった月の前々月の終値の平均額 |
評価方法に4つの価額がある理由としては、株式の特性上、経済などの様々な要因により被相続人の死亡日に株価が高騰または下落する可能性があるため、株価が極端に変動したときの影響を受けないように、相続発生日の終値と3つの平均額から一番低い価格を選んでよいことになっています。また、被相続人が死亡した日が土日祝日の場合、証券取引所は休みであるため、取引の金額を求めることができません。そのため、相続発生日にもっとも近い日における終値を相続発生日の終値として計算します。
たとえば、被相続人が土曜日に亡くなった場合、前日の金曜日の価格を基準に評価します。もし、死亡日が連休の中日の場合には、連休前の終値と連休後の終値の平均額を相続発生日の終値として評価することになります。
株式の銘柄が複数ある場合には、それぞれの株式でもっとも低い金額を選ぶことができます。株式の終値や平均額の調べ方についてですが、上場株式であれば、インターネットで検索すれば分かります。日本取引所グループのサイトなどで、月間の最終価格等を調べることができます。
しかし、自身で調べる手間を省きたい場合には、証券会社に依頼して、株式の終値や平均額についての確認書類の発行を受けることができます。
上場株式評価の具体例
たとえば、被相続人が5月10日に亡くなり、保有していた上場株式2,000株を相続する場合の相続税評価額について考えます。
評価方法 | 具体例 |
---|---|
相続発生日の終値 | 5月10日 4,500円 |
相続があった月の毎日の終値の平均額 | 5月の毎日終値平均 4,000円 |
相続があった月の前月の終値の平均額 | 4月の毎日終値平均 3,800円 |
相続があった月の前々月の終値の平均額 | 3月の毎日終値平均 4,100円 |
上記の4つの評価額の中で、一番低い価格は4月の最終価格の平均額である3,800円だとわかります。したがって、上場株式の相続税評価額は、3,800円×2,000株=760万円となります。
もし、相続発生日に最終価格がない場合やその株式に権利落などが起きている場合、評価の基礎となる最終価格について一定の修正をすることになります。また、評価の対象となる上場株式が2つ以上の金融商品取引所に上場されている場合は、納税義務者が選択した金融商品取引所の最終価格を採用することができます。
非上場株式の場合
非上場株式の株価算定には、多様な方法があります。以下は、会社法上の株式買取請求における価格の算定方法になります。
1.純資産方式
会社の純資産(総資産の額-総負債の額)を発行済み株式数で除して、株価の算定を行う方式です。基準となる純資産額の算出方法により、簿価純資産法、修正簿価純資産法、時価純資産法に分かれます。
価純資産法
1株の価格 = 簿価純資産額 ÷ 発行済株式総数
簿価純資産額とは、会計帳簿上に記載されている資産から負債を控除した純資産額のことです。
修正簿価純資産法
1株の価格 = 含み損益を加味した簿価純資産額 ÷ 発行済株式総数
会計帳簿上の純資産額を基本にしながら、含み損益を評価に加味して株価算定を行う方法です。
時価純資産法
1株の価格 = 時価純資産額 ÷ 発行済株式総数
時価純資産額とは、時価評価された資産から時価純資産額を算出する純資産額です。
2.配当還元方式
配当還元方式とは、株式の価値を過去の配当実績に基づいて評価する方法です。会社の配当金額を基準として、これを発行済株式数で除して評価します。配当のうち、内部留保分を算定の考慮に入れるかによって、配当還元法、ゴードン・モデル法と算出方法が分かれます。
配当還元法
1株の価格=(将来予定される年間配当額 ÷ 資本還元率)÷ 発行済株式総数
ゴードン・モデル法
1株の価格=将来予測される年間配当金÷(資本還元率-投資利益率×内部留保率)
これは、内部留保された利益が将来の利益を生み、配当金は一定割合で増額すると仮定した上で、株価に反映させる方法です。投資利益率(ROI)とは、投資金額に対し1年間に生み出す利益(税引後純利益)の額の割合をいいます。内部留保率とは、税引後当期純利益のうち、株主への配当に回さず、会社内に留保して利益剰余金として計上する割合のことです。
3.比準方式
類似の会社、事業の資産や利益等の複数の比準要素を比較することによって株価を評価する方法です。
基本的な算式は、下記となりますが、様々な調整が行われます。
1株の価格=A×〔(B÷C)+(D÷E)×3+(F÷G)〕÷5×斟酌率
※アルファベットの中身は下記となります。
A | 類似業種に属する会社の平均株価 |
B | 被評価会社の1株当たりの配当金額 |
C | 類似業種に属する会社の1株当たりの配当金額 |
D | 被評価会社の1株当たりの利益金額 |
E | 類似業種に属する会社の1株当たりの利益金額 |
F | 被評価会社の1株当たりの純資産額(簿価) |
G | 類似業種に属する会社の1株当たりの純資産額(簿価) |
斟酌率 | 大会社の場合 0.7、中会社の場合 0.6、小会社の場合 0.5 |
4.収益方式
会社が将来獲得すると予想される年間税引後純利益を資本還元率で除したものを発行済株式数で除して評価する方法です。
この収益方式には、2種類の方式があります。
収益還元法(直接還元法)
収益還元法とは、会社が将来生み出す利益を基準に株価を評価する方法です。
1株の価格=(将来予測される単年度の税引後純利益÷資本還元率)÷発行済株式総数
将来獲得すると予想される1年分の税引後利益を、資本還元率で還元して、株価を算定します。資本還元率は、市場金利・長期国債利回り・評価対象会社の調達金利等を基に、これに危険率(評価対象会社の規模・業種・経営環境・市場動向等を総合的に判断した割合)を加味した上で決定されます。
DCF法(Discounted Cash-Flow Method)
1株の価格=将来予測される年度別収益を現在価値に割引いた合計÷発行済株式総数
これは、将来の利益を現在の価値に換算して計算する方法です。
5.併用方式
上記1~4の方式を組み合わせて評価する方法になります。
いずれも純資産や前期1年間の取引額など、さまざまな要素を考慮して判定するため、専門家である税理士や会計士に任せるのが一般的となります。
また、非上場株式の評価額を相続税算出のための税務上の評価基準を参考にして評価することもあります。その場合には、原則的方法と特例的方法の2種類があります。
原則的方法
会社の規模に応じて3つの計算方法があります。
-大会社は、類似業種比準方式
-小会社は、純資産価額方式
-中会社は、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
と、会社の規模ごとに区分をして、各区分で異なる評価方法を用います。被相続人および相続人の株式保有割合が一定以上ある同族株主に該当する場合には、この原則的評価方式によって非上場株式を評価することになります。
特例的方法
配当還元方式で評価されます。
経営に参画していない少数株主の場合、配当還元方式によって株価を評価するのが一般的です。
株式を相続する場合の注意点
株式を相続する際の注意点についてご紹介します。
準確定申告が必要なケースがある
被相続人が亡くなる前に株取引で利益が出ていた場合には、相続人が準確定申告をします。準確定申告とは、亡くなった被相続人に代わって、相続人が確定申告を行うことです。準確定申告の期限は、相続開始から4ヵ月以内と定められているので注意が必要です。
株式を売却して利益が出た場合に譲渡所得税がかかる
相続した株式を売却して利益が出た場合、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の税率は、所得税と住民税を合わせて一律20.315%です。
ちなみに、相続した財産を3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を売却時の利益にかかる所得税から控除し節税を行うことができる特例があります。これを相続税の取得費加算の特例と言います。どういうことかというと、資産を売却した場合には、通常、利益部分に所得税がかかります。
売った金額 - 買った金額 = 利益部分
もし取得費加算の特例を適用すると、
売った金額 - 買った金額 - 支払った相続税の一部 = 利益部分
という算式で利益部分を計算することができます。
なお、最終的にこの利益部分に税率をかけて納めるべき所得税を計算することになります。
この取得費加算の特例を受けるためには、3つの要件があります。
(1)相続や遺贈により財産を取得した者であること
(2)その財産を取得した人に相続税が課税されていること
(3)その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
株式を売却するタイミングに注意する
株式の評価額は日々変動します。相場を調べずに売却すると、思わぬ損失が出ることもあります。特に、株価が低い時期に売却すると、予定よりも少ない金額しか受け取れない可能性があります。
また、売却を検討している場合には、株主の権利確定日や相場の市況を確認することが大切です。なぜなら、売却のタイミングによっては、本来であれば受け取れるはずの配当金がもらえなくなる場合があるからです。もし、株式が非上場株式の場合、自分の手元に残さず、売却を考えているようなときは、譲渡制限株式であるかどうかを確認しましょう。
譲渡制限株式とは、株式を譲渡する場合に会社の承認が必要とされている株式です。非上場株式の場合は、多くが譲渡制限株式になっています。そのため、非上場株式を第三者に譲渡しようとする場合には、当該会社の承認を得なくてはなりません。もし、第三者への株式譲渡が承認されない場合には、会社または会社の指定する指定買取人が非上場株式を買い取ることを、会社に請求することが可能です。
弁護士に依頼するメリット
株式の相続手続は、手間がかかるケースが多いため、株式の相続について弁護士に相談・依頼するメリットについてご紹介します。
遺産分割協議がまとまらない場合
相続人が複数いる場合、誰が株式を相続するかでもめてしまうことがあります。特に、株式は現金のように簡単に分割できるものではないため、争いが生じやすい資産です。弁護士に依頼することで、ご依頼人に代わって、他の相続人との交渉を行い、感情的な対立を防ぎ、スムーズに協議を進行することが可能です。
株式の価値が大きい場合
相続財産の中に高額な株式が含まれている場合、相続税の申告が必要になります。相続税の計算は複雑であり、税理士と連携して適切なアドバイスが可能となります。
手続が煩雑で負担が大きい場合
証券会社ごとに異なる手続や、多くの書類を準備する必要があるため、相続人自身で手続を進めるのは非常に大変です。弁護士に依頼すれば、必要書類の収集や証券会社とのやり取りを代理で行い、ご依頼人の負担を大幅に軽減することができます。
株式の評価が難しい場合
相続した株式の中に非上場株式がある場合にも、煩雑な手続を任せることができます。非上場株式の評価算出は難しく、会社経営に関係する株式を相続する場合には、事業承継の問題も発生するため、弁護士のアドバイスが必要なことが多いです。
株式の相続に関するご相談は弁護士法人シーライトへご相談ください
相続財産に株式が含まれている場合、手続は複雑になりがちです。特に、証券会社とのやり取りや、遺産分割協議の調整は手間がかかるため、相続人だけで進めるのが難しいこともあります。
また株式は、時期によって価値が変動するため、売却を検討している場合にはタイミングも重要になります。弁護士に依頼することで、手続がスムーズに進み、相続人の負担を軽減することができます。
株式を含む相続に関する問題でお困りの際は、弁護士法人シーライトにご相談ください。